事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
労働力人材の不足や競争力の強化を目的に、工場の自動化に取り組む企業が増えています。当記事をご覧の方の中には、工場の自動化を検討している方もいるでしょう。
そこで今回は、「工場の自動化の概要、取り組みの流れ」について解説します。工場の自動化をどう進めたらいいか検討している方は、参考にしていただけたらと思います。
工場を自動化する際に検討される代表的な手段として、以下の2項目が挙げられます。それぞれについて簡単に解説します。
工場の自動化として、もっともイメージしやすいのは産業用ロボットの導入です。具体的な産業用ロボットの種類としては、以下の5種類が挙げられます。
これらのロボットを導入することで、従来は作業者が行っていた業務をロボットが行うようになるため、工場の自動化を実現できます。
産業用ロボットの導入以外には、IoTやAIを活用したシステムの導入が工場の自動化に繋がります。
工場に設置したさまざまなセンサで取得した情報を集約し、その情報をAIで分析することで、データ収集、そのデータの入力や管理、分析業務の自動化が可能になります。
このシステムを生産管理システムや受発注システムと連携させることで、社内外との情報伝達も自動化できます。
工場の自動化を実現することには、以下のような大きなメリットがあります。
近年、日本では少子高齢化の急激な進行や働き方の多様化により、さまざまな業界で深刻な人材不足に陥っています。仕事がきついイメージのある製造業では、その傾向が顕著です。
工場の自動化を行うことで、作業者が行っていた作業をロボットやIoTシステムに任せられるようになり、必要な人員を削減できます。また、自動化された工場は洗練されたイメージを与えられるため、仕事がきついイメージを払拭できる可能性があります。
工場の自動化を進めることにより、多くの業務は作業者が行うよりも効率的に実施できます。また、作業者は休憩が必要ですが、ロボットやシステムは必要なメンテナンスを行えば、長時間の稼働が可能なため、生産効率を大きく向上できます。
業務の効率化により浮いた人的リソースは、より付加価値の高い業務に充てられるでしょう。また、生産性の向上により、製品の原価低減や新たな製品価値追加を実現できるため、競争力の強化に繋がります。
作業者が工場で行わなければならない作業を自動化できれば、多くの作業者が現場にいる必要がなくなります。現場に行かなくても対応できる業務が増えることで、リモートワークの活用など、従来よりも柔軟な働き方を実現できます。
従来の条件では採用が難しかった優秀な人材や、多様なバックグラウンドを持った優秀な人材の雇用に繋がる可能性があります。
工場の自動化を進めるにはいくつかのデメリットもあるため、それぞれ紹介します。場合によっては、致命的なデメリットとなり自動化を再検討せざるを得ない状況も考えられるため、あらかじめ確認しておくといいでしょう。
工場の自動化を実現するためには、産業用ロボットやIoT・AIシステムを導入する必要があり、大きな初期投資が必要です。また、導入費用だけでなく、定期的なメンテナンス費用や状況に応じた改修費用なども必要になります。
特に、継続的に必要な費用は検討の際に漏れてしまいがちなので、十分な注意が必要です。
産業用ロボットやIoTシステムの導入には、社内でそれぞれの専門知識を持った人材を確保することが望ましいです。深い専門性が必要な部分は外部の人材を活用できますが、自社側の窓口となる人材にもある程度の知識が求められます。
また、中長期的な目線で見ても、ある程度の費用をかけて自社人材の育成を行う必要があり、設備の導入とあわせて育成計画を立てることが重要です。
安全性確保などの目的で、ある作業を産業用ロボットで自動化する場合には人間よりも広い作業スペースが必要になる場合が多いです。
もともと、人が作業する前提で工程が構築されており、スペースの余裕があまりない場合に、ロボットの導入スペースを確保するために大幅な作業工程やレイアウトの変更が必要になる可能性があります。
工場の自動化を実現するための流れに決まったものはありませんが、以下の流れで進めるのがよいでしょう。
まずは、工場を自動化することで解決したい課題を抽出する必要があります。この段階では、解決手段を限定せずに、部署を超えた広い視点から柔軟に抽出を行うことが重要です。
この段階での抽出が適切にできないと、実際には大きな効果が期待できる項目であっても対策を行うことができません。工場の中でさまざまな仕事を行う関係者が協力し、漏れのないように抽出する必要があります。
幅広い範囲の中から抽出した課題の優先順位を決め、どの部分を自動化することで課題を解消できるのか、自動化する対象を選定します。また、自動化の手段としてどのようなものを選択するべきかを明確にする必要があります。
はじめから手段を決め打ちすることなく、幅広い選択肢の中から柔軟に決めていくことが重要です。
実際に工場の自動化を進める際には、取り組むべき対象を狭めて一部だけの自動化を進めるといいでしょう。範囲を狭めれば、自動化に失敗した際のリスクを下げながら取り組みを始めることができます。
一部の自動化を実現できたら、その効果が事前に想定した通りだったかどうか、効果の検証を実施します。その結果によって、その後に取るべきアクションが変わってきます。
一部を対象に自動化した結果を分析し、その結果得られた自動化の改善点を反映させていきます。狭い範囲で自動化したものをそのまま展開していくと改善点が残ってしまうため、注意が必要です。
改善点を反映したら再度効果を確認し、その結果得られた改善点を再度改善するという流れを繰り返し、ブラッシュアップしていくことが重要です。
自動化した範囲で、事前に想定した通りの効果が得られるようになったら、自動化の範囲を拡大します。狭い範囲から始めて、しっかり効果を出してから拡大していくことで、リスクを下げながら効率的に効果を最大化できます。
ここで、実際に工場を自動化して効果を出している企業の事例を解説します。ここで紹介する事例は、経済産業省が発行している2020年版のものづくり白書で紹介されているものです。
ダイニチ工業株式会社は、IoT技術の活用やロボットの導入で業務効率化を実現しています。自社で開発した生産管理システムにより部門横断で情報共有を効率的に行えるようになり、生産リードタイムの低減や省人化に繋がっています。
ダイニチ工業株式会社では、生産管理システム以外にも、ロボットを活用した組み立て作業の自動化や画像検査システムの導入を行っています。
多くの製造業では、熟練技能者のノウハウ伝承が大きな課題になります。株式会社山之内製作所は、熟練技能者の技術に頼りすぎないように、IoTやロボットを積極的に活用し、繰り返し行う必要がある業務の自動化を進めています。
例えば、無人搬送システムと自動化ロボット、生産管理システムを連携させることで、生産効率の向上と省人化を実現しています。自動化により熟練の人材のリソースがあくため、ものづくり工程の設計開発部門に配置し、クリエイティブな人材の育成を進めています。
オークマ株式会社は、製造業の中でもIoTやビッグデータ、AIを活用して工場の自動化や無人化を推進していることで知られています。
ロボットを積極的に活用することで、工場の自動化領域を拡大し続け、ある工場では週末の72時間無人稼働を実現しました。省人化でリソースがあいた人材は、生産管理など付加価値の高い間接業務に配置転換をしています。
最後に、工場の自動化を実現する際に重要なポイントを解説します。これらのポイントを把握した上で取り組むことで、リスクを低減できるでしょう。
工場の業務を自動化することで、これまで自動化される業務を行っていた従業員の仕事内容は大きく変わります。工場の自動化を成功させている企業は、自動化により仕事が変わった人材をうまく生かしています。
特に、長年その業務を行っていた人材には影響が大きく、抵抗を示す場合もあるでしょう。丁寧な説明を行い、他の場所でこれまで培った能力を生かしてもらえるように調整する必要があります。
新たなことを始める場合、机上での事前検討通りに進むのはまれであり、工場の自動化も同様です。まずは小規模に始めて、うまくいくことを確認できたら、徐々にその規模を拡大していくことが重要です。
スモールスタートで工場の自動化を進めることで、リスクをおさえながら効果を最大化できます。
自動化の対象を選定する際には、既存設備との関係を考慮する必要があります。従来は連携している設備の一部のみを自動化した場合、自動化しない設備との連携がうまくいかずにトラブルが発生するおそれがあります。
影響をできるだけ最小化できるように、連携を考慮する必要がない範囲を選定するか、事前に対策を講じておくことが重要です。
製造業において、競争力を確保するために工場の自動化は必要不可欠です。解決したい課題を明確にし、産業用ロボットやIoTシステムなどの手段を適切に選択することで、業務効率化や品質向上を実現できます。
実際に工場の自動化を進める際には、他社の事例をうまく参考にしながら、今回紹介したようなポイントに注意することで、成功確率を高められるでしょう。