事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
IoTの活用方法はさまざまですが、その一つに省エネがあります。製造業でIoTといえば生産性の向上などが注目されがちですが、省エネもIoTに対する期待の大きい分野です。
製造業では非常に多くのエネルギーを必要とします。そのため、特に近年ではCO2排出の抑制や電気料金の上昇などにより、省エネへの必要性が高まっています。効率的な省エネを可能にする手段としてIoTが活用されているのです。
IoTによる省エネには大きく分けて次の2つがあります。
省エネにおいて最も基本的な対策は、エネルギーの消費そのものを抑える方法です。とはいえ、製造業で使用している機器は、簡単に稼働を止めたり設定温度を変えたりできるものではありません。
そこでIoTを活用して、より細かく設備をコントロールしたり、エネルギーの消費状況から設備の運用方法を変更したりするなどの方法があります。
省エネにおけるもう一つの対策は、エネルギー消費の波をできるだけ小さく抑え、需給をコントロールする方法です。エネルギー需要に波があると、ピーク時に合わせた発電量を確保しなくてはならず、オフピーク時には余剰電力になってしまうからです。
IoTを活用すれば、エネルギーの生産量や使用量の監視がしやすくなります。近年では、太陽光発電の発電量や電池の充電量などを監視しながら、発電機での発電量を調整する方法なども行われています。
エネルギー消費量を抑えるためにIoTを活用する事例は、工場や施設などで既に数多くあります。ここではいくつかの代表的なケースを紹介します。
金属部品の熱処理に使う加熱炉の省エネに成功した例です。IoTを用いて工場にあるさまざまな設備のエネルギー消費量を調査したところ、加熱炉のエネルギー消費量が多かったため、加熱炉の省エネを行うことになりました。
IoTを活用して、加熱炉の制御データと消費電力量のデータを確認したところ、熱処理のための加熱時の電力消費量が特に多いと分かりました。そこで、熱処理前の余熱時間を必要最小限に最適化すると共に、作業工程全体を見直すことで加熱炉が加熱されたまま待機となる時間を削減して、加熱工程に必要なトータルの電力消費量を抑えました。
工場で使われている加工機に対しIoTを活用することで省エネ化に成功した例です。加工機の消費電力を時系列で確認したところ、設備が停止した後の再稼働時に、特にエネルギー消費量が高くなることが分かりました。そこで加工機の停止が少なくなるよう、IoTを活用して予兆検知などの対策を行いました。
これによりトラブルによる加工機の停止が減り、生産性が向上したことに加え、省エネにも成功しました。
大きな商業施設の空調設備において、従来はどの場所でも同じ強さに設定されていました。しかし、場所により室温にばらつきが発生するのに加え、室内にいる人が手動で室温をコントロールしていたため、エネルギー効率が悪い状態にありました。
そこでIoTを活用し、各部屋の温度のデータを基に、空調を場所ごとに自動制御する仕組みに変更しました。その結果、設定温度の無駄な変更がなくなり、安定した空調運転をできるようになったため、省エネにつながりました。
デマンドコントロールは、電気の基本料金を抑えられるように機器をコントロールする手法です。基本料金は平均使用電力によって決まるため、例えば冷凍庫の設定温度の管理においてIoTを活用した自動制御を導入することで使用電力を減らし、電気の基本料金を抑えるものです。デマンドコントロールは使用電力を減らす方法であるため、同時に省エネにもなっているのです。
前述のとおり、エネルギー消費の波を抑えて需給のコントロールを行うことは省エネにつながります。そのため、小規模発電も含めたシステム全体の最適化を行うことでエネルギー効率を向上する手法があります。
スマートグリッドとは、IoTを活用して需給のコントロールを行う電力網システムのことです。太陽光発電を含む小規模発電所から供給される電力と、家庭や事業所などの電力需要を自動制御します。さらに、需要が増えて小規模発電ではまかないきれない場合には、大規模発電施設から送られてきた電力を活用したりします。
省エネにIoTを活用するメリットをいくつか紹介します。
状況・状態の可視化はIoTの強みの一つですが、これは省エネにおいても同様です。IoTを活用すれば、機器や設備の消費電力、消費電力の推移などのデータが収集しやすくなり、可視化もしやすくなります。現状が可視化できれば、省エネに向けた改善点も見つかりやすくなり、効果的な対策が行えます。
IoTを活用すれば、電力消費量の推移だけでなく、関連する機器の稼働状況や周辺の室温、周辺の人やモノの動きなど、さまざまなデータを可視化することができます。これによって複数のデータを比較し、電力消費量に影響を及ぼすパラメータの特定も可能になります。
IoTの強みの一つに、広い範囲や離れた場所のデータを同時に確認できる点があります。この強みは省エネでも活かせます。離れた拠点にある同じ設備の消費電力量を比較したり、広い工場全体の室温分布を確認できたりします。そして、これらのデータを活用し、より効果的な省エネを行うことができます。
IoTを活用した省エネの手順を簡単に紹介します。
まずは現状の消費電力のデータを収集します。あらかじめ対象とする機器や設備を定めてデータを取得する方法や、さまざまな設備のデータを取得してから省エネを行う対象を決定する方法があります。
消費電力だけでなく、機器の稼働状況や周囲の環境など、消費電力に影響を与えそうなもののデータも同時に取得します。これにより、より効果的な省エネが行えるようになります。
収集したデータを時系列や他のパラメータと併せて分析し、消費電力が増加する原因やタイミングを見つけます。
消費電力増加の原因が特定できたら、対策を行い、さらにその後の消費電力量の推移を見て効果を検証します。
製造業における省エネにもIoTが活用できます。使用している機器や設備の消費電力状況を可視化することにより、消費電力が増加する原因を特定したり、機器や設備を省電力を抑えるように自動制御する方法があります。また電力網における需給のバランスをコントロールする方法もあります。IoTを活用すれば、状況が可視化されるだけでなく、他のパラメータや広い範囲のデータが集めやすいため、より効果的な対策を行いやすくなります。