事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
近年、製造業ではIoTの導入が活発になっています。当記事をご覧の方の中には、工場などでIoT導入の担当になり、どのように導入していけばいいか検討している方もいるでしょう。
そこで今回は、「製造業におけるIoTの導入事例」について解説します。製造業におけるIoT導入の状況や実現できること、具体的な導入事例について紹介しているため、IoTの導入を検討している方は、参考にしていただけたらと思います。
製造業では、『中小ものづくり企業 IoT 等活用事例集』で取りあげられているとおり、大企業だけでなく中小製造業までIoTの導入が活発になっています。社会情勢の変化が激しい状況の中で、人材不足の解消や競争力強化を実現するために、IoTの導入は有効な選択肢の一つです。
また、『令和2年版情報通信白書』で取り上げられているとおり、スマート工場などの産業用途での利用が拡大しています。
IoTを導入することで、従来は人が行っていた作業をIoTシステムに任せられるようになります。また、従来行っていた作業自体を不要にできる可能性もあるため、業務を効率化し、従来以上の成果に繋げることができます。
ドイツでは、「Industrie 4.0」をスローガンとして掲げ、国家プロジェクトとしてIoT導入に取り組んでいます。また、アメリカや中国などでも国家規模の取り組みが始まっています。
日本では、『IoT推進コンソーシアム』が設立されました。これは産学官が連携し、IoT推進に関する技術の開発・実証、新たなビジネスモデルの創出を推進するための体制を構築することを目的としています。
IoT推進コンソーシアムの具体的な活動として、IoTやAIなどに関する技術の開発や実証、特定の課題に関する検討、情報の発信や普及、啓発などが行われています。このように、日本でもIoTの導入を製造業に導入していく土台が整ってきました。
製造業でIoTを導入したいと考えた場合、どのようなアイデアがあるのかすぐには思いつかない場合もあるでしょう。工場以外の部分では、他の業種と同様の施策を取り入れられるため、事例が豊富にあります。そこで今回は、製造業の工場で実現可能なアイデアを4つ紹介します。
それぞれ、順番に解説します。
工場では生産設備に各種センサを取り付けることで、電流や設備の稼働時間、移動量などさまざまなデータを取得できるようになります。生産設備へのIoT導入により、取得したデータをクラウドに集約し処理をすることで、さまざまな分析が可能になります。
予知保全は、集約されたデータを専用のAIアルゴリズムなどで分析することで、生産設備の故障を予測して、メンテナンスする取り組みです。保全には他に事後保全や予防保全がありますが、予知保全がもっとも効率よく無駄の少ない保全方法と言えます
予知保全を用いることで、生産設備が故障や不具合などに繋がりそうなタイミングを予測できます。突然の故障による設備停止を防ぐことができ、事前にメンテナンスのスケジュールを立てられます。それにより、保守部品の在庫量を必要最低限にし、メンテナンスに向けた生産調整を行うことが可能です。
大企業を中心に、多くの製造業で予知保全を導入する取り組みが進んでおり、工場のIoT導入例の中でも注目が集まっています。
生産設備の中には、予知保全の導入が難しいものがあります。例えば、メンテナンス時期を予測するために必要なAIアルゴリズムの構築が難しかったり、稼働時間が短く、十分な量のデータが集められなかったりする場合です。
このような場合には予知保全ではなく、IoTシステムを活用して生産設備を常時監視し続けることで、生産設備への異常発生やトラブルを遠隔で速やかに検知できます。
遠隔で監視ができない場合には、生産設備が正常に稼働をしているかどうか実際に巡回して確認する必要がありました。特に生産設備が広範囲に点在していたり、夜間も稼働していたりする場合には、作業者の負担が多いにもかかわらず、生産性の向上に繋がりにくい業務です。
また、実際に異常発生や故障を発見できたとしても、それがなぜ起きたかといった原因を明確にするのが困難な場合があります。
このような課題に対して、IoTの導入により常時データを取り続けることが、効果的な解決策になります。異常・故障の監視には集約されたデータをモニタで確認する作業者が一人いればよく、取得し続けたデータによってトラブルの要因解析から再発防止がスムーズに進むようになるでしょう。
環境問題が深刻になる中で、製造業では生産時に発生する温室効果ガスの量などを明確にする必要が出てきました。特にカーボンニュートラルの推進では、具体的にどの程度の量が発生しているのかを明確にし、納品先に報告するよう要求される場合もあります。
工場では温室効果ガスの発生源として、生産設備だけでなく空調や照明などが挙げられます。IoTの導入によって、これらがどの程度エネルギーを使用しているかを見える化できます。それにより、温室効果ガスの量を推定するためのデータを集約でき、タイムリーな状況把握が可能です。
また、生産設備ごと、時間帯ごとにエネルギー使用量がデータ化できているため、特にエネルギー使用量の大きい部分の特定に加えて、実際に削減していく際に取る施策の効果を見える化することが可能です。
対策の効果を視覚的に確認しながら取り組めるため、改善を加速させることが期待できます。
特に中小企業などの工場では、経験が豊富な職人の勘やコツによって実現できている製品があります。継続して同じレベルの製品を作り続けていくためには、若手への技術承継が必要不可欠ですが、技術の継承は決して簡単なことではなく、長い時間がかかってしまいます。
IoTの導入により、従来の職人が勘やコツで判断していた部分を数値化することで、取得したデータ自体が重要な財産になります。これから技術を習得する若手は、自分の作業のどこが悪かったかを明確に把握できるようになります。改善点と方向性が明確になるため、技術の習得が加速していくでしょう。
ここでは、実際に製造業において工場などでIoTを導入した際の事例を紹介します。自社に当てはめられるかどうか、効果を出せそうかどうかなどの参考にしてください。事例は、以下の3種類に分類して紹介します。
プラントなどの中には、24時間365日稼働し続けるものがあります。このような設備は、トラブルが発生していないかを常に監視を続ける必要があり、作業員に対して体力的、精神的な負担の大きいものです。
設備の状況を監視するセンサから取得したデータをクラウドに蓄積し、事務所でも確認できるように見える化することで、作業員の負荷軽減を実現し、さらに従来の作業員による監視では困難だった、実際の稼働状況や時系列の状態変化の把握ができるようになります。
AIによるデータの解析環境を整えれば、監視だけではなく予知保全もできるようになります。
ある生産工場では、製造ラインで使用している多くのモーターに対して、モーターごとに電流値をリアルタイムで把握できるようなシステムを導入しました。日々の生産活動を継続する中で、正常時と異常時のデータの蓄積ができています。
蓄積された過去のデータと現在の電流値とを比較することで、モーターの故障を早期に発見でき、従来は週に1回行っていた予防保全的なメンテナンスの効率が向上しました。
また、突発的な故障の発生により、生産設備が停止してお客様に迷惑をかけてしまうリスクを大幅に低減できています。
工場では生産設備だけでなく、空調や照明などさまざまな場所で電力エネルギーを消費しています。IoTでは電力エネルギーの使用量監視とエネルギー制御(デマンドコントロール)の実現が可能です。
デマンドコントロールとは、需要電力を常に監視し、電力使用の自動制御を行うことで、最大需要電力(電力使用量のピーク)を引き下げ、計画的に消費電力の削減をすることです。節電モードに設定するだけで大幅なコスト削減に成功したり、空調の効果を変えずに電力使用量の低減を実現したりしています。
製造業へのIoT導入は、世界中で国家レベルの事業として推進されています。日本でも同様に力を入れており、IoT導入を加速させる土台が整ってきました。IoTを導入することでデータの見える化が実現されるため、工場の省人化やコスト削減、品質の向上を実現できます。
自社にも導入を進めたいけど何から手をつけたらいいか分からない場合には、今回紹介したような事例を自社に当てはめた場合、現場を改善するメリットがあるかという観点で検討してみると良いでしょう。
IoTの導入を検討する場合には、ASTINAがサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。