IIoT(産業用IoT)とは?製造業向けIoTの導入で生産性向上や新たな価値を実現

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労働力人口の減少やグローバル化による競争激化の対策として、製造業など多くの業界でIIoT(産業用IoT)の導入が進められています。この記事をご覧の方の中には、自社にIIoTを導入するための検討をしている方もいるでしょう。

そこで今回は、「IIoT(産業用IoT)の概要やIoTとの違い、導入の進め方」について解説します。IIoTのメリットや具体的な導入方法が分からず悩んでいる方は、参考にしていただけたらと思います。

目次

IIoT(産業用IoT)とは

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IIoT(産業用IoT)とは、「Industrial Internet of Things」の略称で製造業向けIoT、産業分野向けIoTを意味しています。製造業や物流業界を中心に、インフラ業界や輸送業界などで活用されているIoTです。

IIoTが普及する背景

IIoTは、Industry4.0(第4次産業革命)や経済産業省が提唱する“Connected Industries”を実現するために、取り組みが進んでいます。

Industry4.0の根幹は、CPS(サイバーフィジカルシステム)を導入したスマートファクトリーの実現です。CPSは、現実世界(フィジカルシステム)でセンサが取得した情報をサイバー空間で分析、解析し、その結果を現実世界に活かすことを目指したシステムです。

生産工程や流通工程にIIoTを導入することで、自動化・バーチャル化の比率を高め、製品の生産や流通に必要なコストを低減し、生産性の向上を目指しています。

“Connected Industries”は、2017年に経済産業省から提唱されました。モノとモノ、人と機械、人と技術などさまざまな繋がりにより、新たな付加価値を生み出していく繋がった産業を表現しています。“Connected Industries”を実現するために必要な、繋がりを作り出すために、IIoTが活用されています。

IIoTとIoTの違い

一般的に使われるIoT(Internet of Things)とIIoT(産業用IoT)では、その使われ方が異なります。IIoTは主に製造業や物流業界など24時間体制で稼働する向上などで使われるため、常時稼働できることを前提にシステムを構築する必要があります。

また、IIoTの不調により生産ラインが停止してしまうと、自社だけでなく納品先の企業にも大きな影響を与えてしまいます。そのため、IIoTには通常のIoTに比べて、高い堅牢(けんろう)性、信頼性が求められます。

IIoTの導入によるメリット

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IIoTを導入することで、以下のようなメリットがあります。それぞれの項目について解説します。

  • 各工程の効率化による生産性の向上
  • サプライチェーンの見える化
  • 多様化する消費者の要求への対応
  • メンテナンス計画の最適化
  • 提供価値の向上

各工程の効率化による生産性向上

各工程にIoTセンサを設置することで、さまざまなデータを取得できます。

これらのデータを元に製造プロセスを調整することで、タクトタイムの短縮による効率化、生産性の向上を実現できます。

また、不具合が発生しやすい工程を抽出できるため、優先的に対策を行うことで、製品の品質向上にも繋がります。

サプライチェーンの見える化

生産管理システムと生産設備をネットワークに接続するIIoTを導入することで、サプライチェーンの見える化が可能です。

工程の稼働状況をリアルタイムで見える化することにより、受注数量の調整や在庫管理の最適化などを実現できます。

多様化する消費者の要求への対応

近年は、消費者の趣味趣向が多様化しています。また、製品のグローバル化が進むことで、多様な消費者のニーズに合う特徴を持った製品が求められています。

IIoTを導入することで、生産工場内だけでなく営業やカスタマーサポートとの情報交換がスムーズになり、顧客の要求に柔軟に応えられます。競合他社との差別化を進めていくためには、必要不可欠な観点です。

メンテナンス計画の最適化

生産設備の稼働データをセンサなどで取得し、その結果をクラウド上で分析することで、設備に対してどの程度の負荷がかかっているのか、劣化しているのかを検出できます

このデータを用いれば、設備で使われている工具などが故障する前にメンテナンスを行うことが可能です。

実際に故障が発生してしまう前にメンテナンスができるため、計画的に実施することで急な設備の停止による生産遅れなどを避けられます。

提供価値の向上

IIoTで取得したデータやネットワークの活用により、従来から非効率だった仕事の流れを大きく変革できる可能性があります。

時間を生み出すことが可能なため、空いた時間で製品に新たな付加価値を付与したり、新製品の開発に時間を充てたりすることで、お客様に提供する価値を向上できます。

IIoT導入の流れ

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IIoTを導入する際の代表的な流れについて、それぞれ解説します。

  1. 経営層の判断により全社的な体制の構築
  2. 導入したいIIoT(産業用IoT)の仕様検討
  3. IIoTの選定
  4. IIoTの導入と初期設定
  5. 保守・運用
  6. 経営層による判断と全社的な取り組み体制の構築

IIoTを導入するには、工場の生産管理部門だけではなく、社内のIT関連部署や基幹システムを利用している部署など、多くの部署の協力が必要です。

関係者が多くなると意見の調整に時間がかかり、IIoTを導入するための検討がうまく進みません。

そこで、経営層がIIoTの効果について十分に理解し、自社の導入方針を定めることで、全社的に人材や予算を確保し、導入をスムーズに進められる体制を作ることが重要です。

導入したいIIoTの仕様検討

IIoTで実現できることは多くあります。そこで、自社で解決したい課題に基づいて、導入すべきIIoTの仕様を検討します。この段階で、必要な仕様に優先順位をつけておくと、選定をする際に判断しやすくなります。

どのような製品を導入すべきか明確にできない場合には、業種が近い他社の導入事例を参考にするといいでしょう。ただし、参考にする企業と自社で課題がまったく同じでなければ、あくまで参考程度にとどめておく必要があります。

また、サイバー攻撃でIIoTを利用できなくなると大きな混乱が生じるため、セキュリティ確保や故障時の対応について、事前に十分に検討し、仕様に反映することが大切です。

導入するIIoTの選定

実際に導入するIIoTを選定する際には、自社の課題を解決できるツールやサービスを選定する必要があります。

仕様検討で抽出したすべての条件を満たす製品があれば問題ありませんが、実際には仕様検討の際に決めた優先順位に基づいて決めることが多いです。

必要な機能に加えて、コストや保守性など、さまざまな観点を総合的に検討し、導入するIIoTを導入します。

IIoTの導入と初期設定

IIoTは、その用途から常時稼働し続ける場合があるため、導入時の初期設定は重要です。

一度稼働を始めたら、停止状態にして設定変更を行うことは簡単ではありません。

IIoTを導入することで、企業における仕事の進め方はIIoTがあることを前提に組み立てられます。

保守・運用

IIoTの導入後、実際に運用をしていく中で出てきた課題に対しては、随時改善を行うといいでしょう。

また、企業活動に悪影響を及ぼさないように、メンテナンスなど保守管理に力を入れる必要があります。

IIoTを導入するための課題

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IIoTを導入するためには、以下のようなさまざまな課題を解消する必要があります。それぞれについて確認します。

  • セキュリティの確保
  • 高速・広帯域ネットワーク
  • IIoTに対応できる人材の確保

セキュリティの確保

IIoTを導入することで、IoTデバイスが接続するネットワーク上やクラウドに、受注や生産数量に関するデータなど機密情報を保存することになります。

セキュリティの確保が不十分な場合、情報の流出やネットワークに接続された設備の誤作動が発生するおそれがあります。

導入しているIIoTに合わせたセキュリティを確保することが重要です。

高速・広帯域ネットワーク通信

生産設備やセンサなどのIoTデバイスをネットワークに接続することで、ネットワーク通信を行う機器が増え、通信に対する負荷が増大します。

IIoTの機能を最大限に活かすためには、ネットワークの帯域拡張を行うなどの対策が必要です。

現在、5Gの普及に向けた検討が進められており、実際に一部の業界では既に活用が始まっています。大容量、低遅延で高速のネットワークを構築することが期待されています。

IIoTに対応できる人材の不足

日本では、製造業などのメーカーにIIoTを推進できるエンジニアが不足しています。経済産業省が発行しているDXレポートでも、IT人材の不足は今後拡大していくことが指摘されています。

IIoTを推進するためには、センサやデータベースに関する技術に加えて、データの取得、処理、データを分析するAIに関する技術が必要です。

一朝一夕では解決できない課題であり、長期的な視点で人材育成などを進めていく必要があります。

IIoTの導入事例

最後に、IIoTを導入した企業の事例を3つ紹介します。

  • 稼働状況の見える化
  • 属人的な勘・コツからの脱却
  • 予知保全の実現

稼働状況の見える化

ロボットなどの導入により、24時間対応の生産体制を構築した場合、設備の稼働状況を24時間体制で監視する必要があります。

ネットワークカメラを設置し、情報を集約することで、作業者が巡回しなくても稼働状況を見える化するようなIIoTシステムを構築しました。

作業者の負荷を大幅に低減し、人件費の削減に加えて、社員の満足度向上にも繋がっています。

属人的な勘・コツからの脱却

日本では労働者人口の高齢化が進み、熟練した技術を持つ人の属人的な勘やコツに基づく技術を、次世代に伝承する必要があります。しかし、長い時間をかけて習得した技術を引き継ぐのは難しく、時間がかかってしまいます。

そこで、熟練者が作業をする際にさまざまなセンサを用いてデータを取得し、それを分析することによって数値で確認できる指標ができます。明確な指標ができると、どのような差があるか理解しやすいため、技術伝承を加速することが可能です。

予知保全の実現

生産設備のメンテナンスを行うタイミングの最適化は、製造業における代表的な課題の一つです。加工設備では、電動工具にかかる電流をはじめとしてさまざまなデータを取得し、そのデータをAIを用いて分析することで、目視では確認できないような変化を検出できます。

加工工具の劣化を検出し、工具が破損する前に交換を行うことで、予知保全を実現できます。

まとめ

IIoT(産業用IoT)を導入することで、省人化や24時間対応の生産体制構築などが可能です。単に既存の業務を効率化するだけでなく、IIoTを用いて仕事の仕組みを大きく変化させることで、既存製品の価値向上や新製品の開発に繋がる可能性があります。

IIoTは幅広い分野の技術で構成されているため導入に向けた課題は多くあります。まずは、IIoTの必要性を全社的に認識し、導入の検討に着手することが重要です。

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