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IoTプラットフォームを活用することで、効率的にIoTシステムを構築できます。しかし、さまざまなベンダーがIoTプラットフォームを提供しているため、どのような観点で比較し、選択すればいいか、悩んでいる方もいるでしょう。
そこで今回は、「IoTプラットフォームを比較する際のポイント」に加えて、事前に把握しておくべきIoTプラットフォームの種類や役割、導入の流れを解説します。
また、具体的なIoTプラットフォームについても紹介しているため、IoTプラットフォームの比較をしたいと考えている方は、参考にしていただけたらと思います。
IoTプラットフォームとは、クラウドを介してIoTデバイスをネットワークで接続し、アプリケーションを搭載するなどして、サービスを構築するための基盤です。
IoTプラットフォームを使用せずにIoTシステムを構築することも可能ですが、開発要素が多いため、実際に開発するには長い開発期間と多大な費用が必要です。IoTプラットフォームを利用すれば、効率的にIoTシステムを構築できます。
IoTシステムの概要については、以下の記事で詳しく解説していますので、全体像を把握したいという方はそちらをご覧ください。
IoTプラットフォームが持つ機能やどのような種類があるか把握しておくことで、IoTプラットフォームの比較がしやすくなります。
IoTプラットフォームの代表的な機能としては、以下の項目が挙げられます。
IoTデバイスは、IoTプラットフォームに接続することで、データ送受信や管理、制御などが可能になります。また、IoTプラットフォームに接続されたIoTデバイスは、Webブラウザから管理できる場合が多く、PCやスマートフォンで以下のような項目を管理できるため便利です。
IoTプラットフォームを利用すれば、接続しているIoTデバイスをWebブラウザから遠隔制御できます。現場へ行かなくても済むので、移動する際の交通費や時間、またトラブル発生時の復旧に必要な時間とその間の損失を低減できます。遠隔制御が可能な項目は、以下のようなものが挙げられます。
IoTシステムの監視も、IoTプラットフォームが持つ重要な役割のひとつです。IoTプラットフォームに搭載されているモニタリング機能でIoTシステムの稼働状態を監視し、エラーを検知した場合には速やかにユーザーに通知できます。
今後はシステムの監視だけではなく、ヒューマンエラーなど作業者のミスを検知できるように開発が進められています。
IoTプラットフォームは、IoTデバイスの内蔵ソフトウェアやファームウェアを自動でアップデートできます。
ただし、デバイス側がSOTA(Software Over-the-Air)やFOTA(Firmware Over-the-Air)に対応していることが条件です。
遠隔で速やかな更新ができるため、常に最新バージョンにしておくことでセキュリティの確保や新機能の追加、運用効率の向上などさまざまなメリットがあります。
IoTデバイスで取得したデータは、IoTプラットフォームに送信して蓄積することが可能です。IoTプラットフォームに蓄積されたデータは、外部のクラウドサービスに共有できるため、他のサービスでも利用できます。
また、IoTプラットフォームに蓄積されたデータは、IoTプラットフォーム上のアプリケーションで処理したりデータ分析したりすることも可能です。この機能により、データ処理した結果を活用したIoTサービスを構築できます。例えば、ユーザーが確認しやすくするために、膨大なデータを可視化するなどが挙げられます。
IoTプラットフォームは、その対応範囲から大きく3つに分類できます。それぞれの特徴について解説します。
水平型プラットフォームは、特定の業界や業務だけでなく、広い範囲の業界で使用できる汎用的なプラットフォームです。クラウドサービスの基盤とデータの収集や分析に関わる基本的なアプリケーションが用意されています。
拡張性が高く、ユーザーやシステム導入をサポートするSIerがカスタマイズすることで、必要な機能を搭載できます。ただし、基本的な機能が中心なので、業界特有の対応などには基本的に対応できません。
垂直型プラットフォームは、特定の業界や業務に特化したプラットフォームです。特定の業界で使用する、もしくは特定の目的を果たすために必要なクラウド基盤やネットワーク、さまざまなアプリケーション、IoTデバイスをすべてセットで提供可能です。
必要な機能が揃っており、導入後のカスタマイズが不要なため、導入後は設定などに時間をかけることなく、すぐに運用を開始できます。
フルオーダーで自社の目的に合わせたプラットフォームを導入する場合、基本的には特定の業種・業務に特化する形となりますので、多くの場合、垂直型プラットフォームに分類されます。
垂直型プラットフォームは、基本的に必要なものをすべてセットで提供します。しかし、自社で構成要素の一部を用意する場合や予算の制約がある場合には、基本的な機能だけを提供する基本機能提供型やアプリケーションだけを提供するアプリ提供型も選択できます。
垂直型と水平型の両方の機能を併せ持つオールインワン型プラットフォームもあります。オールインワン型プラットフォームとして、さまざまな業界で使える機能をパッケージ化したプラットフォームが開発され、提供されています。
近年のIoTプラットフォームのトレンドとしては、海外のベンダーが、オールインワン型プラットフォームを実現するために、ベンダー同士の提携を加速させています。
IoTプラットフォームは、多くのベンダーからさまざまな種類が提供されています。これらを比較する際には、以下のようなポイントを考慮する必要があります。
IoTプラットフォームはクラウドとIoTデバイスを接続する役割を担うため、接続性は重要なポイントです。IoTデバイスの接続は簡単にできるか、接続の際のセキュリティはどの程度必要かによって、接続する際の通信方法やプロトコルを選択します。
また、有線LAN、無線LAN、モバイルデータ通信、LPWA(Low Power Wide Area: 通信速度は低いが、低コストで低消費電力が特徴の無線通信規格の総称)などさまざまな通信形式に対応しているかどうかもポイントの一つです。すでに特定の通信方法、プロトコルだけが必要と明確になっている場合には、あえて対応している機能を絞ることでコスト低減に繋がる可能性もあります。
IoTデバイスがマルウェアに感染したことで、サイバー攻撃に繋がるケースも増えており、セキュリティはIoTプラットフォームを比較する上で重要な要素となっています。
確認するポイントとしては、通信を行う際にセキュリティが確保されたプロトコルが使用されているかどうか、リモート管理でデバイスをアップデートできるかどうかなどがあります。
また、映像など、IoTデバイスで取得した個人データを含む情報は、クラウド上へ送信するのは望ましくありません。そこで、デバイス側で解析し、解析結果だけをクラウドへ送信するエッジコンピューティングに対応しているかどうかも重要なポイントです。
必要となるアプリケーションや接続するIoTデバイスの数は、構築したいIoTシステムに応じてさまざまです。
そこで、後からアプリケーションやデバイスの追加に対応可能かどうか、接続するIoTデバイスを増やしても通信の応答性やセキュリティの確保ができるかどうかは、比較をする上で重要なポイントとなります。
ここまで紹介した接続性、セキュリティ、拡張性は、いずれも高い機能を有している方が望ましいと言えます。しかし、構築したいIoTシステムに対してオーバースペックになってしまう場合もあります。
オーバースペックになった場合、つまり必要のない機能まで含んだIoTプラットフォームを選ぶことになるとコストが増大してしまいます。IoTプラットフォームを比較、選定する際には、予算と必要な機能のバランスを取ることが重要です。
どのような機能が必要なのか、できれば事前にIoTシステム全体の設計を通して整理しておくことが望ましいといえます。
IoTプラットフォームの導入の流れを把握しておくことで、比較をする際の観点を明確にできます。ここでは、導入に向けた流れの一例を紹介します。
導入するIoTプラットフォームを検討する前に、そもそもIoTプラットフォームを採用する必要があるかどうか、確認が必要です。
導入・運用費用に対して十分な効果が見込めないようであれば、IoTプラットフォームを利用しないのもひとつの選択肢となります。
着手したばかりの段階で検討結果を残しておくことで、経営環境や競合の状況など変化が生じた際に、どのような判断をすればいいか分かりやすくなります。
IoTプラットフォームを導入することを決めたら、構成要素であるハードウェアやソフトウェアに関する要件を定義します。IoTプラットフォームはさまざまな役割を担っているため、自社が導入したい機能を実現するための要件定義が必要です。
要件定義ができたら、パッケージ製品で要件を満たせるかどうか、調査・検討を行います。一般的に、パッケージ製品で対応できる場合にはコストを抑えることが可能で、運用ノウハウも豊富な場合が多いといえます。
一方で、パッケージ製品で対応できない場合には、パッケージ製品のカスタマイズやフルオーダー、自社開発などの選択肢が挙げられます。
IoTプラットフォームを導入し、継続的に運用していくためには、スキルを持った社内人材が必要です。必要な人材が自社にいない場合には、対応できない業務の外注や必要なスキルを持った人材の採用を検討する必要があります。
ここまでの検討が完了したら、導入するIoTプラットフォームや導入時に提供されるサポートなどの選定を行います。
多くのベンダーがさまざまなIoTプラットフォームを提供しているため、比較をする際にはポイントとして紹介した項目を精査しながら決めていくといいでしょう。
選定が完了したら、実際にIoTプラットフォームを導入し、IoTシステムを構築します。運用開始後にトラブルが発生した場合やカスタマイズが必要になった場合には、ベンダーなどにサポートを依頼するといいでしょう。
最後に、世界的に知名度が高く、汎用的なIoTプラットフォームとして利用可能なサービスの具体例を紹介します。
Amazon Web Servicesが提供するAWS IoTは、双方向通信が可能なIoTプラットフォームです。センサーの遠隔監視などIoT分野で注目されているMQTT(Message Queuing Telemetry Transport)という通信プロトコルに対応しているため、軽量でスピーディーな通信が可能です。
既存のAWSサービスとのスムーズな連携が可能で、オフラインで使わざるを得ないデバイスでも、ネットワーク接続時に同期できる「デバイスSHADOW」とよばれる機能を搭載している点が大きな特徴です。
Microsoftが提供するIoTプラットフォームであるAzure IoTは、多くのユーザーが利用しているMicrosoft 365と連携ができる点が大きな特徴です。他にもAIによるリアルタイムな応答や機械学習のIoTプラットフォームサービスを利用し、データ分析を簡略化できる点が魅力です。
高度なAI解析に対応している点が特徴的なIoTプラットフォームが、IBMのWatson IoT Platformです。IoTデバイスを簡単に活用でき、アプリケーションを利用することでデバイスの状況の可視化、管理が可能です。
ブロックチェーンを用いて管理されているため、データの改ざんリスクは小さく、セキュリティ性の高いIoTプラットフォームを構築できます。
Googleが提供する最先端のサービスを利用できるのが、Google Cloud Platform(GCP)です。
データへの接続は、クラウドに加えてエッジデバイスからも行うことができ、データの処
理、保存、分析まで対応したクラウドサービスとなっています。機械学習の適用により、高度な分析を行うことも可能です。
シーメンスのMindSphereは、シーメンス単独で構築するのではなく、複数のベンダーと協力体制を築くことで、豊富な機能の実装を実現しています。
さまざまなデバイス、企業システムに接続できるように多数の通信プロトコルやアプリケーションに対応しています。また、AWSクラウドサービスも利用でき、高度な分析が可能です。
GEデジタルが提供するPredixは、エッジコンピューティングの機能が充実していることが特徴のIoT_プラットフォームです。単一のコンソールから最大20万台のデバイスを接続、管理でき、さまざまな業界のデータを収集し、高度な分析に活用できます。
IoTシステムを構築する際に基盤となるIoTプラットフォームは、さまざまなベンダーが製品を提供しています。どのIoTプラットフォームを採用するか、比較・検討をする際には、IoTプラットフォームの種類や求められる役割を把握しておく必要があります。
IoTプラットフォームを比較する際のポイントとして、接続性、セキュリティ、拡張性、コストなどが挙げられます。実際に導入する際の流れを想定することで、これらのポイントに基づいた検討を進められるでしょう。
ASTINAは産業向けに特化したIoT開発を行っている企業です。IoTを導入するとなると、プラットフォームだけではなくセンサや通信の方法など、さまざまな要素を検討する必要があります。「自社をIoT化したいが、不明点がたくさんある…」。このような企業様は、お気軽にご相談ください。