事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
製造業では、IoTの活用を進める企業が増え、設備の監視や生産時のさまざまなデータ取得などが行われています。IoT技術で生産設備やロボットなどを遠隔操作することも、製造業におけるIoTの効果的な活用法の一つです。
当記事をご覧の方のなかには、業務改善のためにIoTを用いた遠隔監視の検討をしている方もいるでしょう。そこで今回は、「IoTを用いた遠隔監視のメリットと導入の流れ」について解説します。導入を検討している方は、参考にしていただけたらと思います。
IoTを用いた遠隔操作を行うことで、離れた場所からでも生産設備やロボットなどをコントロールできるようになります。IoTによる遠隔操作を実現することで得られる代表的なメリットを3つ解説します。
生産設備の操作を現場で行う必要がある場合、拠点が異なると現場に行くための交通費や移動時間が大きなコストとなります。同じ拠点内であったとしても往復の移動時間が必要となり、その時間で他の業務を行うことはできません。
ネットワークに接続できる環境で、生産設備の遠隔操作ができれば、どこからでも設備の操作をすることが可能です。拠点が複数あったり、設備の台数が多かったりしても、現場に行かずに1つの場所から操作ができるため、現場対応に必要なコストを大きく低減できます。
複数台の設備対応を短時間に行うためには、複数人での対応が必要になります。特に、タイミングを合わせた操作が必要な場合は、連携しながら行うため自由な行動が制限されてしまいます。
IoTを用いた遠隔操作であれば、複数台の設備を同時に一人で操作できます。また、異なる設備のタイミングを合わせた操作が必要な場合でも、適切なプログラムを構築することで、最小限の人数での対応が可能となり、省人化に繋がります。
製造業の工場では、暑熱環境や騒音の大きな環境下でも、生産設備を操作しなければならない場合があります。このような環境では、従業員への負担が大きく、健康への影響や、交代要員の確保が必要になります。
過酷な環境下で作業を行う必要がある生産設備を遠隔操作できるようになれば、日常的に厳しい環境下で作業を行う必要はなくなります。定期的なメンテナンスは必要ですが、過酷な業務を行う頻度を大幅に低減できるため、従業員の負担は減り、労働環境に対する満足度向上に繋がるでしょう。
IoTによる遠隔監視で実現できる事例を、具体的に3つ紹介します。
IoTによる遠隔操作を活用すれば、複数台のロボットを同時に操作することが可能です。今後は、自律走行型の搬送ロボットであるAMRの採用が広がっていくことが想定されます。
通常時はあらかじめ組み込まれたプログラムに応じて自動運行を行う運送ロボットであったとしても、異常が発生した場合や緊急時には、作業者がコントロールすることがあります。一台ずつ操作をする必要があるため、台数が多い場合は特に手間がかかります。
これらのロボットを遠隔監視することができれば、工場内の搬送ロボットを一人で管理できます。トラブル発生時にも同時に複数台の動きを制御できるため、省人化の実現に加えて、連携した動きにより運搬効率の向上に繋がる可能性があります。
工場に複数台の生産設備を導入している場合、設備の保守管理に必要なデータとして、設備の稼働状況や生産時の負荷データなど、さまざまな情報を抽出する必要があります。通常は、情報抽出用のPCなどを用いて個別に収集しなければ、適切なデータを入手できません。
生産設備をIoTによりネットワーク接続することで、生産設備の制御部分の遠隔操作が可能になります。複数台の設備を同時に遠隔監視、遠隔操作をすることで、状況把握やデータ収集、そのデータを用いた設備の保守管理を効率的に実現できます。
IoTを用いた遠隔監視を導入することで、夜間でも無人での設備稼働を行えるようになります。しかし、何らかの問題が発生すると事故に繋がるなど、速やかに処置が必要になるような設備の場合、遠隔地から駆けつけたのでは間に合いません。
IoTによる障害通知と、遠隔操作での設備の緊急停止をできる状態にしておけば、現場の監視員の削減、迅速な対応が可能となります。
IoTによる遠隔操作を実現するためには、以下のような手順で行う必要があります。
遠隔操作システムの構築に着手する前に、遠隔操作を実現することで解決したい課題を明確にする必要があります。課題を明確にすることで、その課題を解決するために、何を遠隔操作すればいいのか判断できます。
IoTによる遠隔操作を実現するためには、システム導入にコストや時間が必要になります。そのため、課題を解決したいタイミングから、着手するタイミングを逆算することが重要です。
遠隔操作をする際には、さまざまなデータからどのように操作すべきか判断するため、根拠となるデータを取得する必要があります。
取得したいデータの種類や精度に合わせたセンサを選定し、操作をしたい生産設備へ設置することで、遠隔操作に必要なデータを取得できます。
遠隔操作をするモノによっては、操作指示をするためにリモコン制御システムを必要とする場合があります。
例えば、ロボットを遠隔操作したいが直接指示をすることができない場合には、ネットワークに接続された遠隔操作用のPCに、専用のソフトウェアをインストールすることで、PCが遠隔操作用のリモコン制御システムとなり、ロボットを遠隔操作できるようになります。
遠隔操作システムが構築できたら、運用を開始します。実際に運用をする中で課題が生じることが想定されるため、生じた課題を随時解決し、改善を続けることで、使いやすい遠隔操作システムを構築できます。
IoTによる遠隔操作を実現する際には、いくつかの注意点があります。
IoTを用いた遠隔操作システムでは、収集したデータに基づいて設備に指示を出す場合があります。遠隔操作をしたいモノや用途によって、データ収集や指示に必要な通信速度は異なります。通信遅れによって悪影響が出ないように、許容される遅延の範囲内に抑えた通信状態を確保することが重要です。
IoTによる遠隔操作システムは、ネットワークからの指令によって設備を制御できるため、ウイルスなどに感染し、悪用された場合には、大きな被害に繋がるおそれがあります。遠隔監視システムに対する外部からの不正アクセス防止やネットワーク上の監視など、十分なセキュリティを確保することが重要です。
IoTシステムに対するセキュリティについては、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご確認ください。
遠隔操作でロボットなどを制御している最中に不具合が発生した場合、操作しているロボットの暴走など、悪影響を及ぼすおそれがあるため、対策が必要です。
不具合によって生じる可能性がある事象を抽出し、それぞれのシーンでどのような状態になるかを明確にすることで、不具合状態を想定したフェールセーフ処置が可能になります。この処置を施すことにより、影響を最小限に抑えられます。
IoTを活用することで、従来は現場で行う必要のあった作業を遠隔操作で実現できるようになり、省人化や生産性向上によるコストの低減に繋がります。また、従業員にとっても、柔軟な働き方を実現するための効果的な選択肢となります。
一方で、データの送受信をネットワーク経由で行うため、通信の遅延や悪意を持った外部からの攻撃にさらされるおそれがあるため、設備の設定やセキュリティ確保は、慎重に行う必要があります。IoTを用いてリスクを抑えながら、効果を最大化させる遠隔操作システムの構築が重要です。