事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
製造業を中心に、仕事の効率化や私たちの生活の充実を実現するために、センシング技術が活用されています。当記事をご覧の方の中には、業務の中でセンシング技術を学び、活用できないか検討している方もいるでしょう。
そこで今回は、「センシング技術とはどのようなものか」「具体的な活用事例や将来はどうなっているか」について解説します。センシングの概要を把握して、うまく活用していきたい方は、参考にしていただけたらと思います。
センシングとは、センサを利用して情報を計測し数値化する技術の総称です。センサで取得する情報の対象としては、温度、湿度、画像、音などに加えて、電流、脈拍、ジャイロ、赤外線、ガスなどが挙げられます。取得できる対象別にさまざまな種類のセンサが開発されており、近年はセンシングした情報を活用したIoTの導入が進められています。
代表的なセンサの種類を以下に示します。これら以外にもさまざまな種類のセンサが開発されており、用途に合った適切なセンサの選定をするためには、どのような種類があるのかを把握しておくことが重要です。
センサ名称 | 概要 |
レーザセンサ | 投光部からレーザを照射し、受光部で検出する。直進性が高い |
近接センサ | 非接触で、検出物体が近づいたことを検出できる |
光センサ | 投光部から可視光や赤外線を発射し、受光部で検出する |
カラーセンサ | 光センサの一種で、赤・青・緑などの色を判別できる |
超音波センサ | 超音波を利用して、距離を測定する |
画像判別センサ | 撮影した画像を音にAIなどで画像内容を判別する |
接触式変位センサ | 検出帯に接触子が振れることで位置を測定できる |
圧力センサ | 液体や気体などの圧力を測定する |
角度センサ | 回転体の回転角度を検出する |
センシングは、スマートセンシングとリモートセンシングに分類できます。
スマートセンシングは、対象物の近くにセンサを設置して測定や検知を行うセンシング技術です。単にセンシングという場合には、このスマートセンシングを示していることがほとんどです。
センシングによる情報の取得対象は幅広く、処理速度も速いため、さまざまな分野で活用されています。スマートセンシングに用いられるセンサには、以下のようなものがあります。
アクティブ方式 | 測定対象に送った信号の反射を検出 |
パッシブ方式 | 測定対象から測定用の信号を受信して検出 |
インライン分析 | 測定対象に接触したセンサが検出、分析、送信などを連続的に実施 |
オンライン分析 | 測定対象の近くにセンサなどを配置し、自動サンプリングと分析を常時連続的に実施 |
オフライン分析 | サンプルをセンサやサンプリング機器の元へ持ち込んで検出 |
リモートセンシングは、対象物に触れることなく遠隔地から情報の計測・定量化を行うセンシング技術です。例えば、人工衛星を活用して、雲の動きなどの気象情報を取得することが挙げられます。リモートセンシングで用いられるセンサには、以下のようなものがあります。
可視・近赤外リモートセンシング | 反射した太陽光の可視光や近赤外線をとらえて観測 |
遠赤外リモートセンシング | 地表の表面からの遠赤外線をとらえて観測 |
能動型マイクロ波センサ | 衛星上のセンサが発した電波が地表に当たった反射をとらえて観測 |
受動的マイクロ波センサ | 自然に放射されているマイクロ波を観測 |
センシングデータを活用することで、IoTの実現など以下のようなメリットが得られます。
センシングにより対象物の距離や位置、電流などの情報を常時取得できるため、リアルタイムの情報に基づいた操作や指示が可能です。特にIoTの実現や工場設備の自動化などを行う際には、リアルタイムの情報に基づいた判断を行うことで、生産性や品質の向上を実現できます。
完成品の詳細な寸法や加工時に工具に通電している電流量など、従来は分からなかった情報をセンシングにより可視化することで、その情報を用いた作業の改善が可能です。それにより、効率的な作業を行うことができるため、コストの削減に繋がります。
センシングにより取得した情報をクラウドに集約し、分析するようなIoTシステムを構築することで、設備の状態を把握し、故障などの望ましくない事象を事前に検知できます。事前に状況を想定し準備をしておくことで、故障の回避や回避できなかったとしても影響の低減を実現可能です。この考え方は、工場における設備の予知保全などに活用されています。
ここからは、さまざまな産業分野において、センシング技術をどのように活用しているのか把握するために、具体的な活用事例を紹介します。
労働力不足の解消や競争力強化を目的に、センシング技術によるIoTやAIを活用したスマート工場が注目されています。例えば、生産ラインを自動化するためにカメラや圧力センサなどが用いられ、設備の予知保全や作業者の技能伝承などのIoT活用にも、さまざまなセンサが活用されています。
日本のエネルギー自給率は低く、海外の状況に左右されやすいため、自給可能な再生可能エネルギーへの転換や省エネ化が進められています。
センシング技術を活用し、エネルギーの消費量が少なく環境にやさしい自動車の開発が進められています。また、センシング技術は、ゼロエネルギー住宅の普及や自然エネルギーとなる海上風力発電の実現に寄与できます。
少子高齢化が進む中で健康寿命の重要性に関する報道が増え、ヘルスケアに注目する人が増えてきました。ヘルスケア産業では、センシング技術を活用して健康寿命を延ばすような製品の開発が進められています。
具体的には、健康維持のためにリストバンド型センサや体組成計による体内の確認、人体の内外を測定する医療センサが挙げられます。また、医療業界でもセンシング技術開発を進めることで、必要な処置を短時間で精度よく行えるようになると期待されています。
生産工場以外の場でも、人間と触れ合ってコミュニケーションを取るロボットや家事を代わりに実施してくれるロボット、AIアシスタントなどが普及しつつあります。
カメラやマイクによって周囲の状況を監視することで、人間が生活する環境において人間の代わりに働いたり、人間の癒やしになったりします。ロボットに使われるセンシング技術が発展することで、ロボットは人間に近くなり、私たちの生活が豊かになる可能性があるでしょう。
さまざまな業界でデジタル化が急速に進み、デジタル機器に対して人間が指示を与える方法は、センシング技術を活用することで多様化しています。
例えば、ディスプレイを操作する場合には直接画面に触ることが多いですが、最近では非接触式のセンサを活用して、触れずに操作が可能なディスプレイが開発されています。これ以外にも、五感をデジタル化する機器の開発など、見えない情報の可視化が可能になっています。
徐々に導入が進められている自動運転技術を開発するためには、さまざまなセンシング技術の活用が必要不可欠です。
LiDARや赤外線センサ、カメラなどの外部状況を監視するセンサに加えて、自動運転が可能な車両常態かどうかを把握するための車内センサ、また自動車との連携が研究されているインフラ側のセンサなど、その種類は多岐にわたります。
農業の現場では、若者の農業離れや農業従事者の高齢化などが大きな課題となっています。農作業の省力化や効率化、特徴のある農作物の栽培が解決策の一つとして挙げられ、その実現のためにセンシング技術が活用されています。
例えば、作物の生育状況を可視化することにより、効率よくおいしい野菜を作れる環境の管理が可能です。また、畑の中を自動で走行できる農業機械や農業用アシストスーツ、薬剤散布などに使用されるドローンにもセンシング技術が活用されています。
センシング技術は、ただセンサを使ってデータを測定すればいいわけではありません。そこで、センシング技術の活用を望ましい成果に繋げるためのポイントを解説します。
やみくもにデータを取得しても、そのデータをうまく活用することはできません。実現したいことに対して、何を測定すればいいのか、センシングの対象を明確にすることが重要です。
また、その対象に対して必要な検出精度はどの程度か、得られる見込みの効果に対して、イニシャルコストやメンテナンスコストは見合っているのかといった観点から、適切なセンサを選定する必要があります。
センシングによって取得したデータは数字の羅列になっているため、そのデータから意味のある情報を抽出するのは困難です。そこで必要なのがデータの処理ですが、その処理方法によって見え方は大きく異なります。
時系列データに加え、X軸とY軸にそれぞれ関連する情報を設定し関係性を確認することやデータを微分した状態でグラフ化します。そうすることで初めて気付ける情報もあり、データの意味合いを考えながら、多面的な解析を行うことが重要です。
解析したデータは、それをどう活用していくかによって、成果が出るかどうかが大きく異なります。分析結果は必要な関係者で共有し、さらなる改善策の検討や重要な施策の判断に活用できれば、センシングが大きな成果に繋がるでしょう。
例えば、データ活用によって自社向けに課題を解決できれば、同様の悩みを抱えている企業向けの製品やサービスの提供といった、新たなビジネスチャンスにできる可能性があります。また、注力分野や撤退分野の判断などに、集約・分析されたデータが役立つこともあります。
発展し続けているセンシング技術は、今後も開発が推進されていくと考えられます。その方向性としては、従来よりも適用可能な範囲を拡大するために、精度の向上やセンサ自体の小型化、また低コスト化が期待されています。
センサ自体の技術開発に加えて、センシングによって取得したデータをうまく活用するために必要な分析手法の開発も重要です。例えば、AIを用いたアルゴリズムの開発が進められており、人間では気付かない特徴をデータから抽出できるようになるでしょう。
センサを用いてデータを取得するセンシングは、さまざまな業界で活用されている技術です。近年は、自動運転を実現するための外部監視やスマート工場を実現するためのIoT技術開発などに用いられています。
センシング技術を有効活用するためには、センサの選定や妥当な解析手法の選択が重要になるため、関係者で知恵を出し合うことが重要です。今後もセンサや解析技術の開発が進められると考えられ、センシング技術の活用はさらに広がっていくでしょう。