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距離センサは、製造業の現場や私たちの日常で非常に多く用いられているセンサの一つです。その理由は、ただ距離を測るだけでなく、距離の変化を利用してさまざまな判定を行ったり、面や物体に対して等高線のように相対距離を測定することで形状を認識できたりする部分にあります。
ここでは距離センサの用途や使い方、種類や特徴について解説していきます。
距離センサとは、対象物までの距離を測るセンサのことです。しかし距離センサに求められるのは、ただ距離を測ることだけではありません。距離の測定を応用し、変位量の監視や安全装置といったさまざまなアプリケーションに利用されているのです。
距離センサがさまざまな場面に応用できる理由は、距離の変化をモニタリングできるからです。動くものをモニタリングするならば、それまで遠くにあったものが近くに来たり、近くにあったものが遠くにいったりする変化を検知できます。
また限られた空間において、定められた基準までの距離を常にモニタリングしていれば、物体がセンサと基準の間に進入してきたことを検知できます。
このような原理により、距離センサは位置制御や変位量測定、安全装置や寸法測定などに利用されているのです。
ここでは、距離センサが実際にどのような場面で、どのように利用されているかを具体的な事例を用いて紹介します。荷物の搬送、タンク内の液量管理、自動搬送車やロボットの衝突防止、製品の仕分けについて解説します。
ここで紹介するのは、荷物の搬送の位置制御に距離センサを使う事例です。
コンベアなどを用いて荷物を一定の位置まで動かす場合、荷物を停止させるべき場所をあらかじめセンサに記憶させておきます。センサからコンベア上の荷物までの位置を測定しながらコンベアを動かし、荷物が所定の位置に来たらコンベアを自動で停止させるシステムを組めば、荷物の位置制御が可能になります。
このような手法はライン上の搬送や物流だけでなく、機械の動作制御にも応用できます。
センサから測定対象物までの距離の変化をモニタリングする手法は、さまざまな場面に応用できます。
例えば水や薬品を貯蔵するタンクの液量管理も距離センサで可能です。上蓋から液面の距離を距離センサで測定すれば、液量の増減が確認できます。液中にセンサを設置する必要がないため、後付けでも設置しやすいのがメリットです。
距離センサは安全装置にも多く利用されています。近年導入数が増加している自動搬送車や自動掃除ロボットの衝突防止に利用されているのも距離センサです。
自動搬送車や自動掃除ロボットの進行方向にある物体との距離を常に測定し、一定の距離以下になったら停止させたり方向転換をさせたりします。
距離センサは、寸法測定にも利用できます。
一定の速度で流れてくる製品に対し、測定点から製品までの距離を測定すれば、距離が短い間は製品が「ある」。距離が長い間は「ない」という判定になります。製品が「ある」と判定されていた時間と製品の移動速度から、寸法が測定できるのです。
この手法は、コンベア上を流れてくる製品の寸法を元に仕分けを行う際などに活用されています。
距離センサは基本的に、光や音波などを発射し、それが物体に当たって帰ってくるまでの時間を利用して距離を測定します。
測定時に飛ばすものの種類によって、距離センサは大きく3種類に分けられます。具体的には、レーザー光を用いるもの、電磁波を用いるもの、超音波を用いるものです。
レーザー光を用いた距離センサは光学式、LiDAR(ライダー)とよばれます。
可視光の他、紫外線や近赤外線が用いられます。分解能が高く、小さなものでも検出でき、精度は±数mm程度と高い精度をもちます。
一方で、光が透過するものの測定や、埃の舞う環境、光の状態が複雑に変化する場所での測定はあまり得意ではありません。自動搬送車が障害物との距離を認識する安全装置や、製品の形状や寸法を認識しての自動仕分けなどに利用されます。
ミリ波に該当する電磁波を用いた距離センサは、いわゆるRADAR(レーダー)のことです。
遠くまで測れるのがメリットで、周囲の明るさや埃などの環境に強いのも特徴です。
精度は±0.1mm程と優れています。しかしプラスチックや衣服、非金属物質など、電波を吸収しやすい素材は検出しにくい弱点があります。
定められた空間で動くものを検出する人感センサや、セキュリティ目的で多く使用されています。
超音波を利用した距離センサは、小型で比較的安価なことが特徴です。
また液体や固体の中でも利用できるのがメリットです。
一方で測定可能な距離が10m程度までしかなく、対象物もある程度大きくないと測定できないのがデメリットです。また、スポンジや発泡材のような、音を吸収する物質の検出は難しいです。
人が近づくと電気を点けるための人感センサや、コンベア上の荷物の検出などに使用されます。
距離センサは、種類によってそれぞれ特徴が異なります。そのため、用途によって適しているセンサも変わります。ここではセンサの種類と活用場面を紹介します。
LiDARは自動車の先進安全技術/自動運転技術での利用や、スマートフォンの一部の機種に顔認証のため搭載されるなど、近年、用途が広がっています。
自動搬送車の前方に障害物がないか確認し、障害物がある場合には搬送車を停止させます。また、搬送ルート周辺物との距離から周辺の地形を認識し、走行ルートを記憶させるなどの使用例もあります。
通常のカメラでも顔認証は可能ですが、写真による「なりすまし」ができてしまう場合があります。そのため、センサからの距離の認識を利用し、まるで等高線を描くように物体の凹凸を認識する方法があります。
光学式の距離センサであれば、人の顔のような複雑な形状も認識できるため、顔認証に活用できます。電子機器の顔認証によるセキュリティや、特定の人の出入りの監視などにも利用できます。
顔認証と同じように、製品の形状の認識もできます。これを利用して、製造ライン上や物流現場での製品の仕分けや、異物混入のチェックなどが可能です。
RADARは、航空機の他、船舶が付近にいる他の船舶の位置を知るために使われるなど、比較的早い段階から距離センサとして活用されてきました。最近は自動車の安全支援技術としての用途が増えています。
天候や明るさなど、周囲の環境の影響を受けにくく、遠いところから監視できる性質を活かし、幹線道路の交通量の監視にも使われます。道路上部にセンサを取り付け、路面までの距離を測定します。自動車が通ると、センサまでの距離が短くなります。自動車が1台通過するごとに距離が変化するため、交通量が測定できるのです。
精度が非常に高いため、わずかな動きも検知できる性質を生かし、人の動きを検知する人感センサとして活用できます。
人の意図的な動きだけでなく、呼吸や拍動に伴うわずかな動きを検知し「人がいる」判断を行います。侵入防止としてセキュリティにも使える他、近年では乗用車やバスの車内に人が取り残されていないか確認する、安全装置としての活用も期待されています。
超音波センサは、距離センサの中では近距離の物体を対象にした比較的シンプルな距離検知に多く活用されています。
小型で比較的コストが低い特徴を生かし、自動車を駐車する際の障害物近接センサにも利用されています。壁などの大きな障害物に対して低速度で近づくような場合の、比較的単純な距離測定に適しているからです。センサから障害物までの距離を測定し、一定以下の距離になると警告音を鳴らす仕組みです。
近年、環境対策により節電への関心が高まっています。普段は人の出入りが少ない場所の照明を人感センサでON/OFFするケースも増えてきました。センサから床や壁までの間を人が通過するのに伴い、測定される距離が変化するのを利用します。このような場合でも、比較的低コストで導入しやすい超音波距離センサは適しています。
距離センサの活用幅は非常に広いと言えます。距離や大きさだけでなく、物体の形状を認識するケースや、カメラとの情報を併せて使い高度な処理を行うケースも増えています。ここでは、距離センサの応用的な使用方法を紹介します。
3D ToFは、ToFセンサという距離センサをカメラのように利用し、周囲の物体の形状を3Dで取得する方法です。
光学(LiDAR)方式の距離センサが主に用いられます。人の顔の認証や製品の種類の判定のほか、ある空間にいる人数の把握など、多くの場面で活用されています。
距離センサとカメラから得た画像認識を組み合わせれば、複雑な判断も可能になります。近年増えている自動運転やドライブアシスト機能をもった車で、この組み合わせがよく用いられています。
例えば、カメラで前方の車の姿を認識し、ミリ波を利用した距離センサで前方の車との距離を測ることで、前方の車と一定距離を保ちつつ追従するようなコントロールが可能になります。このように距離センサと他のセンサを合わせて活用する例は、今後さらに増えていくでしょう。
センサから測定対象物までの距離を測るセンサの用途は、ただ単純に距離を測るだけではなく、物体の有無や物体の形状を認識するなど、非常に多くの場面で利用できます。
距離センサは、光やミリ波、超音波などさまざまな要素を使って距離を測定することが可能です。
産業の現場においては、機械の制御や製品の仕分け、安全装置やセキュリティなどに活用されています。近年では、距離センサをはじめとしたセンシング技術で現場の自動化やデジタル化を推進する企業が増えてきています。
弊社(ASTINA)は、AIやロボット、IoTの技術を用いて、工場の自動化を推進した経験が豊富です。もし「現場のこのようなことを改善したい」というようなお悩みがある場合はお気軽にご相談ください。