事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
IoTを活用した安全管理とはどのようなものか、基本的な情報をまとめて解説します。具体的な事例や手法を紹介。
今後予想される動きについても解説しました。IoTを活用した安全管理を検討中のかたは参考にしてみてください。
近年、スマートフォンに、転倒や衝撃を検知して救急に通報する機能が導入されるなど、IoTを安全管理に生かす動きが急速に広まっています。このような変化は、人の見守りや介護の現場だけでなく、製造業においても起こっています。
安全管理においては、継続的かつ広い範囲での監視が必要です。安全管理におけるこの性質はIoTとの相性がいいため、IoTを活用した安全管理の仕組みが広く導入されるようになりました。
人間による監視では、目が離れる時間があることや監視する人の集中力の問題などから、切れ目のない継続的な監視は難しくなります。また、広い範囲を監視するためには、多くの人が必要となり、人件費などのコストがかかります。さらに万が一の際の記録も残しにくくなります。
安全をより確実にし、より少ないコストで管理するためにIoTが活用されているのです。
冒頭で述べた通り、IoTを活用した安全管理は既に多くの場所で導入されています。身近な例では近年、特に高齢者や子供の見守りへの活用が増えています。ここでは製造業における事例をいくつか紹介します。
物流倉庫や工場においては、フォークリフトのような搬送機器と人が同時に動き回るため、人とフォークリフトの接触を避けなければいけません。また、特に通路と通路が交わる交差点では、大きな棚や機器が並んでいるため見通しが悪いことから、出会い頭の接触事故が発生しやすくなります。
そこでフォークリフトに搭載したセンサから送られてくる位置情報と、作業員が身に付けたウェアラブルデバイスからの位置情報を活用し、フォークリフトと作業員の距離が近づいてきた時に、フォークリフトの運転者や作業員に警告を出す仕組みが導入されました。
これによってフォークリフトと作業員との安全性が高まり、結果としてフォークリフトの制限速度を上方修正することができて、より早い搬送が可能になりました。
インフラ設備の地下坑や、滅多に人が来ない場所での危険作業など、安全上の観点から1人で立ち入るのが禁止されているエリアもあります。そのような場所に1人で立ち入って事故が発生した場合、発見が遅れて救助が困難になってしまうからです。
そこで従業員が所持する端末の位置情報をモニタリングし、そのようなエリアへの単独侵入があった場合に、立ち入った従業員や安全管理部門にアラートを送る仕組みを作りました。従来はエリアの出入口を監視カメラで監視していましたが、安全管理部門においても、いっときも途切れずカメラの映像を監視することはできませんでした。
またルールとしては決められていても、ルールの徹底が不十分だったり、作業員がうっかりルールを失念してしまったりした場合でも、端末からの警告があれば立ち入りをやめ、エリアから速やかに退出できます。この仕組みの導入により、設備の安全管理の精度が向上しました。
大きな加工機や設備の場合、機械や設備の中に人が入ってメンテナンスを行う場合があります。このような時は、作業員の安全確保のため、機械の主電源を切り、外にいる人が誤って機械を稼働させないように表示します。しかし残念なことに、作業中に誤って機械を稼働させてしまい、大きな事故になるケースもたびたび報告されています。
このようなケースを防止したい場合に、作業員に持たせたデバイスで位置情報を取得し、作業員が中にいる間は、機械が作動できないようにしたり、機械の近くにいる作業員に、他の作業員が機械の中にいることを知らせるアラートを出したりするなどの対策があります。
機械の中に人がいるのに機械を作動させてしまうような事故は、基本的に人的ミスが原因です。さまざまな方法で人のミスを減らすことはできますが、完全になくすのは困難です。IoTの力を借りれば、より確実な安全対策が可能になります。
IoTの活用で、現場で働く作業員の体調管理も可能になります。近年、日常生活においてもウェアラブルデバイスで健康管理に役立てるケースが増えていますが、これと同様に、作業員に所持させたウェアラブルデバイスから、作業員の体温や心拍などの情報を取得します。
そして体温の上昇や心拍の変化など、体調不良が疑われるパターンを認識した場合、作業員の端末や管理者に向けてアラートを出します。
例えば加熱炉のそばや真夏の屋外の建設現場など、熱中症リスクの高い現場などでは、重篤な症状に至る前に休息を促すことができるようになり、現場の安全管理がより確実になります。
IoTを活用して安全管理を行うために生かせる情報は大きく分けて3つあります。下記に挙げるようなデータをセンサで取得することが、安全管理への第一歩になります。
作業員や搬送機、機械の位置情報を活用する方法です。搬送機の接近を知らせたり、侵入禁止エリアへの立ち入りを監視したり、転落の危険性のある場所を知らせるなどの活用方法があります。また、転落や転倒を検知し、管理者に知らせるなどの事例もあります。
ウェアラブル端末を利用し、作業員の体温や心拍、呼吸などをチェックする方法です。
前述の事例のように、体調不良による事故を未然に防ぐ他、人の往来の少ないエリアで急に体調を崩した場合に素早く救護できるようにしたり、感染症のまん延を防止したりするなどの活用方法があります。
また、搬送車などの運転中に発作を起こしたら、搬送車を自動停止させるなど、他の情報と組み合わせて活用するケースもあります。
監視カメラなどから送られてくる画像情報も安全管理に活用できます。作業員の服装や装備を監視カメラとAIで自動チェックしたり、作業員の動きを監視して、通常と違う動きを行ったらアラートを出したりするなどの活用方法があります。またAIで人や動物を認識し、立ち入り禁止エリアへの立ち入りを検知する方法もあります。
IoTを活用した安全管理を開始するためには、事前にIoT環境を整え、ある程度の情報が集まっている必要があります。なぜなら安全管理とは「危険な状況」を検知することでもあるため、何が危険であるかの判断基準が必要だからです。
安全管理を開始するための手順を、次に紹介します。
まずは監視する対象を決定し、その監視のためにはどのような情報を用いて、どのように管理するかを決定します。位置情報やバイタル情報、画像情報のうち、状況や目的に適したものを選択します。
必要なセンサを必要な場所に設置します。作業員に端末を所持させたり、カメラを設置するなどの作業です。またそれらのセンサから送られてくる情報を受信する仕組みも整えなければいけません。場合によっては、大がかりなシステムを組む必要があるため、計画的な作業が大切です。
情報を集める準備が整ったら、まずはしばらく、情報収集のための運用を行います。集まった情報を分析し、警告を出す基準やアラートの対象、警告が出た場合の作業フローなどを整えます。
ここまでの準備が整ったら、運用開始です。運用しながら状況に合わせて調整し、より確実な安全管理が行える環境を目指します。
産業界における労災防止や安全対策への意識は、近年ますます高くなっており、その動きは製造業も例外ではありません。IoTの普及もあり、危険性を減らすためにIoTを活用しようという流れは止まらないでしょう。安全管理において今後予測される動きを解説します。
IoTを活用した安全管理では、常時監視や大量監視が当たり前になります。そのため、AIが活用されるケースは増えていきます。特にAIを用いて作業員の行動の異常を判定することが増えていくと考えられます。
2023年初頭の時点では、JISやISOなどの安全管理基準にIoTは盛り込まれていません。しかし今後、盛り込まれていく可能性も考えられます。IoTを活用した安全管理の基準が新しく作られたり、規格に適合する安全管理のためにはIoTを活用しなければならなくなったりすることが予想されます。
継続的な監視や広い範囲の監視を行う際、IoTは活用しやすいため、安全管理でIoTを活用する動きが広まっています。
作業員と搬送車の接近を知らせたり、立ち入り禁止エリアへの侵入を検知したりする他、作業員の体調の変化を検知するなどの方法があります。安全管理に使いやすい情報には、位置情報、バイタル情報、画像情報があり、状況と目的に合わせて活用します。
IoTを用いた安全管理は、今後さらに広まっていくだけでなく、ISOやJISによる規格が作られる可能性もあるため、そのような情報はこまめにチェックしていくといいでしょう。今後、自社へIoTの導入を検討されている方は、弊社にお気軽にご相談ください。