事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
リモート点検とは何か、基礎知識をまとめて解説します。実際の事例を紹介し、メリットや似た機能、発展的な機能についても解説します。リモート点検の導入について考えているかたは参考にしてみてください。
リモート点検とは、離れた場所から設備や機器の点検を行うことです。リモートメンテナンスともよばれています。IoTを活用して遠隔で装置を動かしたり、センサからの情報を取得することで点検作業を行います。
現場に行かなくても点検業務ができることが特長です。
一般的にリモート点検では、機器の稼働状況の監視や障害発生時の調査、機器の起動や停止などの制御、システムの更新などが行えます。
IoTの基本的な機能である「機器を遠隔で操作する」と「センサを用いて離れた場所の状況を把握する」を組み合わせ、点検作業を行うことになります。
リモート点検は大きく分けて次の3つの手法に分けられます。
機器が稼働している際に発生する振動や圧力などのデータをセンサで収集し、変化がないかを遠隔で常時監視する方法です。監視カメラで確認する方法もあります。
通常時の稼働とは異なる試験プログラムが用意されており、遠隔でそのプログラムを実行して、その時の振動や圧力、機器の挙動などのパラメータを確認する方法です。
機器のソフトウェアを更新するためのプログラムを、遠隔で実行する方法です。
リモート点検は、製造業の現場において、すでに多くの場所で広がっています。身近な例としては、パソコンのオンラインウイルスチェックなどもその一つです。
工場で使われている加工機の稼働状況を、メンテナンスサービス会社などがオンラインでリアルタイム監視します。これにより加工機に異常が発生したり、故障で停止したりした際には、いち早く対応できるようになりました。
またこれまでは、工場の担当者に電話を通じて機械の状況を確認してもらっていました。しかし電話越しのやりとりでは分からないことも多く、そのような場合は状況の把握や問題の特定までに時間がかかっていました。
そこで加工機の各種パラメータを遠隔で確認できるようにし、稼働状況やメンテナンス状況などもリアルタイムに収集できるようにしました。これにより、離れた場所からでも故障の状況の把握や問題の原因特定が容易になり、サービス品質の向上につながりました。
産業用ロボットの修理を行っている会社では、これまではロボットが故障したことについて利用者に連絡をもらい、それから作業員を派遣していました。
しかしIoTを活用し、遠隔で試験プログラムを実施するなど、リモートで保守を行うことで故障の頻度を減らすことができました。さらに遠隔でパラメータの変化を監視することで、利用者が気づきにくい故障を早く検知できるようになり、故障から修理までの時間を短くできました。
工場や会社、商業施設で使われている空調設備の点検を作業員が行う場合、事前の入構手続きが必要だったり、施設が使われていない日時を調整したりするなど、多くの手間と準備期間が必要でした。また現場まで作業員を派遣しなければならないため、人件費もかかっていました。
そこで小型カメラを空調設備の内部に設置し、リモートで空調機器の汚れや異常を監視するようにしました。これにより、現場まで作業員を派遣しなくても空調設備の点検が行えるようになりました。
ガスや電気、水道などのインフラやユーティリティ関係でも、リモート点検の動きは広がっています。
例えば火力発電所の設備点検では、従来は作業員が巨大な設備内を移動し、目視で点検を行っていました。しかしこれをドローンに搭載したカメラで行うことにより、作業員の負担軽減になっただけでなく、移動にかかる時間の短縮などのメリットがありました。
さらにこれまでの目視検査では、作業員の経験やカン、コツに頼っていた部分が多かったため、AIを導入して自動で画像診断を行えるようにし、点検の精度向上にもつながりました。
リモート点検にはさまざまなメリットがあります。そのうち代表的なものを次に記載します。
従来の点検業務では、作業員が現場に行き、状況を直接確認しなければいけませんでした。しかしリモート点検ならば、作業員を派遣しなくても現場の状況を把握できます。また短時間に多くの機器の点検が可能です。
そのため、点検業務に関わる人の数を減らすことができ、それに伴う人件費などの削減にもつながります。
使用中の機器にトラブルがあった場合でも、リモート点検を実施すれば、作業員を派遣せずに状況が把握できます。そのため連絡を受けてから作業員が現地に到着するまでの時間が必要なくなり、トラブル対応の迅速化につながります。
また、修理のために作業員の派遣が必要な際にも、機器の各種パラメータをリモートで入手することにより、故障の箇所や原因が事前に予測できます。そのため、現場に向かう前に修理に必要な準備を整えることができ、到着した後はスムーズに修理やメンテナンスに取りかかれます。
発電や送電、上下水道、通信などのインフラ設備では、巨大であったり、カバーする範囲が広大だったりするケースも少なくありません。従来のように作業員が徒歩で移動しながら点検を行う場合、作業員の負担も大きく、時間もさらにかかります。
このような場所では、監視カメラを用いたり、ドローンを用いたりして遠隔での点検が適している場合もあります。広大な範囲を監視しやすくなります。また危険な場所にある設備の監視についても、作業員を派遣する必要がなくなり、安全に点検や監視が行えるようになります。
故障に至る前の定期点検や予防保全など、問題がないことを確認することが目的の場合、リモート点検を活用すれば作業員を現場に派遣する必要がなくなります。
また、地理的に離れた複数の現場を一括で点検したり、現場から現場へ移動する必要がなくなるため、点検にかかる時間も短くなります。
リモート点検とよく似たものや、リモート点検に必要な技術など、関連する項目について紹介します。
リモート点検とよく似たものに、リモート故障判定があります。点検の結果として故障が発見されれば、それはリモート故障判定であるとも言えるでしょう。
一方で、常時の監視やアウトプット結果の確認など、機器の点検以外の方法で故障判定を行う場合もあります。そのため、リモート故障判定に際してリモート点検が必ず必要というわけではありません。
リモート点検をさらに発展させ、予兆検知や予知保全を行うことも可能です。定期点検の結果を基に、故障に至る前に予防的にメンテナンスを行うケースなどは、予知保全の一種といえます。
一方で、点検は行わずに連続監視によって予兆を検知する方法もあるため、予兆検知や保全のためにリモート点検が必須というわけではありません。
リモート点検はIoTの活用方法の一つです。つまり、IoT環境が整っていないと、リモート点検の導入は難しいのです。
多くのメリットがあるリモート点検ですが、導入に当たっては注意点もあります。リモート点検の導入について検討している場合には、次のような項目を確認しておきましょう。
リモート点検では、機器や設備を遠隔操作したり、機器から送られてくる情報を取得したりします。機器が外部から不正に操作されたり、監視カメラの映像が外部に勝手に使われたりしないよう、対策しなければいけません。そのため、ネットワークに対するセキュリティ対策が必須です。
前述の通り、リモート点検を行うためにはIoTの整備が欠かせません。またそれだけでなく、安定した通信環境や、機械との接続などが正しくできている必要があります。
機器や設備のソフトが監視システムに対応していなければ、せっかくシステムを導入しても点検はできません。通信環境や機器の接続互換性などは、システム導入前にしっかりと確認しておきましょう。
部品交換のような、物理的な修理はリモートではできません。リモート点検の役割は、あくまでもプログラムの更新をしたり、故障状況を判定したりすることです。そのため、現場での対応が一切不要になるわけではありません。
リモート点検とは、離れた場所から設備や機器の点検を行うことで、リモートメンテナンスとも呼ばれています。機器の稼働状況をリモートで確認したり、点検プログラムを実施したり、ソフトウェアの更新プログラムを実施したりします。
省人化や修理の迅速化など多くのメリットがありますが、セキュリティ対策やIoT環境の整備などが事前に必要です。また、物理的な修理はできないことには注意が必要です。
リモート点検は、工場で稼働する加工機の監視やインフラ設備の点検など、多くの分野で活用が広がっています。自社ビジネスへの導入をお考えの際はお気軽にご相談ください。