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状態監視とは何か、基礎知識をまとめて解説します。実際の事例を紹介し、メリットや波及効果、発展的な機能についても解説します。状態監視の導入について考えているかたは参考にしてみてください。
状態監視とは、機械の稼働状況や振動などのデータを用いて、機械がどのような状態にあるかを把握することです。機器の異常やメンテナンス時のパラメータなどを監視し、把握します。
この記事における状態監視の対象は、機械や設備に関するものです。
ネットワーク用語にも「状態監視」という言葉があります。ネットワーク用語での状態監視は、性能監視とも呼ばれ、ネットワークに接続されている機器のリソースを監視することをいいます。
状態監視はIoTと絡めて、すでにさまざまな場所で活用されています。活用事例をいくつか紹介します。
工作機械を動かすモータや搬送機器を動かすためのモータなど、駆動機器の監視にも状態監視は活用されています。
駆動機器に振動センサを取り付け、機器の振動を継続的に監視しています。これにより、異常な振動が発生した際に「異常」と判定し、管理者やメンテナンス業者に通知を送るシステムです。
異常が発生するとそれをすぐに把握できるため、発見までに時間がかかったり、異常状態のまま駆動して被害が広がったりすることを防ぐことができます。結果として異常発生から復旧までの時間が短くなるなどのメリットがあります。
予知保全や予兆保全は、稼働している機械や設備における故障の兆候を検知し、メンテナンスを行う仕組みです。例えば機械類では、故障が近くなると音や振動が大きくなってくることがよく知られています。このように故障が近くなると発生する変化を状態監視によって捉え、故障の予兆を検知、予知するのです。
具体的には、機器に取り付けられたセンサから振動や温度の変化を監視します。平常時から監視することで、平常な状態と故障の予兆となる異常状態を識別できるようにし、兆候があればアラートを出します。これによって故障に至る前にメンテナンスが行え、生産ラインを長時間止めずに済んだり、故障による機械や仕掛品の破損を防いだりできるようになります。
工作機械のメンテナンスは従来、メンテナンスのタイミングやネジを締める強さ、各種パラメータの設定など、現場のベテランのカンやコツに頼る部分が多いものでした。しかし近年、現場で働く職人の高齢化や労働人口の減少などもあり、ベテランのノウハウをいかに若手に継承するかが一つの大きな課題となっています。
このようなケースにおいても、機械の状態監視が活用できます。機械の状況をセンサで可視化することで、メンテナンスのタイミングやパラメータなど、ベテランのノウハウを数値化することが可能になります。これにより若手に技術を継承しやすくなるのです。
機械や設備を状態監視するメリットをいくつか紹介します。
振動や騒音、温度の変化など、目には見えないことも数値化して検知できるのが、状態監視の大きなメリットです。
稼働中の機械の内部や、設備の内部などは、外から目視で確認できません。そのため点検を行う際にはカバーを外したり、他の部品を取り外すといった作業が必要になり、多くの時間と手間を要します。さらに振動や騒音、温度の変化は、大きな変化であれば人にも認識できるものの、小さな変化や徐々に起きた変化は、認識することは困難になります。
しかしセンサを用いて状態監視を行えば、目に見えない部分の状況が把握しやすくなります。さらにセンサにより数値化されるため、変化が分かりにくい場合も見逃すことがありません。
騒音や振動の大きさの変化を検知するなど、従来はベテランのカンコツに頼っていた状況把握を、数値化して可視化できることも大きなメリットです。
状況監視においては、人の五感ではなくセンサが検知した明確な数値が活用されます。そのため従来の「だいたいこれくらい」が数値化され、可視化されるようになるのです。技術継承や作業の平準化にも役立つため、ベテランだけに頼るような属人的な作業を減らすことができます。
機械や設備の状態は、人による監視も有効です。しかし人の目による監視では、目が離れる瞬間があるため、切れ目のない監視は難しくなります。
センサを用いた状態監視ならば、途切れずに常時監視が可能になる他、監視データを保管しておけば、過去のデータを参照するのもかんたんになります。
前述した予知保全は、大きな故障に至る前にメンテナンスが行えるようになる仕組みです。近年はAIの発達などもあり、多くの場所で活用されはじめています。
予知保全を行うためには、その前段階として状態監視が必要になります。逆に言えば、状態監視のシステムが整っていれば、それを予兆保全にもつなげやすくなるということです。
状態監視を行う際には、機械や機器の状況を把握するためにさまざまなセンサが使われます。使用されることが多いセンサやデータのうち、代表的なものをいくつか紹介します。
振動センサは、状態監視に使われるセンサの中でも特に多用されるものです。振動センサは、機械の稼働、停止などの他、異常な振動の発生、経年劣化などを検知できます。
温度センサも、状態監視ではよく使われるセンサのひとつです。加熱炉や冷却室の温度の監視の他、機械そのものや、機械の潤滑に使う油、冷却水、機械の周辺の温度などの監視にも利用されます。
距離センサは、ワークの有無の確認の他、容器に入れられたモノの量の監視、機械の周辺に近づく人の監視などに利用されます。例えば、液状の原料を保管しているタンクのふたに、ふたから液面までの距離を検知するセンサを取り付け、生産数と液の減量速度が一致しているかなどの監視が行えます。
位置センサは、工作機械におけるワークや搬送機の位置の確認などに活用されます。ワークの位置が異常な場所にあった場合には、機械の異常が考えられます。また、搬送機の位置をセンサで把握しておけば、搬送機が異常状態に陥った場合にもすぐに検知できます。
湿度センサは、気体中に含まれる水蒸気の量を数値化するセンサです。事業所や工場の空調の監視などに利用されます。
状態監視によく似たものとしてリモート監視やリモート故障判定が挙げられます。どれもセンサを用いて機械や設備の状況を監視するものですが、どのような違いがあるのでしょうか。
状態監視とリモート監視、リモート故障判定の一番の違いは、ネットワークを介してリモートで確認できるか否かです。
状態監視はセンサなどを用いて状況を把握することを目的としています。そのため、リモート監視やリモート故障判定のように、ネットワーク上から状態を確認できることは必須条件ではありません。そのためIoTを導入せずとも状況監視が可能です。リモート監視は状態監視の一種ということになります。
状態監視とは、センサを用いて機械や設備がどのような状態にあるかを把握することです。機械の稼働状況や、故障の有無、故障の予兆などの状態を把握します。状態監視は、駆動機器の異常監視や予兆保全、ノウハウの継承などの現場ですでに活用されており、見えないものの可視化や変化の検知、常時監視が可能になるなどのメリットがあります。
状態監視には振動センサや温度センサの他、距離センサ、位置センサ、湿度センサなど、さまざまなセンサを活用します。状態監視は、リモート監視とは異なり、必ずしも遠隔からの監視を目的としてはいません。そのためネットワークの経由は必須ではなく、状態監視は、IoTを導入していなくても始められます。