事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
IoTの活用方法のひとつに、設備とネットワークをつなぐ方法があります。工場で使用している生産設備、事業所や商業施設で使用している空調設備などをネットワークに接続するのです。設備をインターネットに接続すると、設備の稼働状況や異常・故障の有無といった設備の情報が可視化され、離れた場所からでも確認できるようになります。
設備とネットワークをIoTでつなぐと、生産性の向上や故障の検知など、さまざまな活用ができます。
産業界におけるIoTとは一体どのようなものか、いま一度確認しておきましょう。
IoTは「Internet of Things」の略で、モノとインターネットがつながることを意味します。2011年にドイツ政府が、今後の技術発展の指針として「インダストリー4.0」つまり「第4次産業革命」を発表しました。これはIoTを軸に、過去の産業革命のような大きな変化を産業界にもたらそうというものでした。
これに伴い、2011年頃からIoTという言葉が盛んに聞かれるようになりました。それから10年以上たち、2023年の今では、IoTは産業界だけでなくさまざま場所で活用されるようになりました。
IoTは非常に広い分野に適用できる技術のため、産業界向けや製造業向けのIoTを特にIIoT(Industrial IoT)と呼ぶことがあります。
IoTで設備をネットワークに接続すると、設備の状態が可視化されるのが一つの大きな特徴です。設備の可視化は、すでにさまざまな場所で活用されています。IoTを活用して設備を可視化した事例をいくつか紹介します。
IoTによって可視化しやすくなる項目に、設備の稼働状況があります。工場で使用される工作機械をネットワークに接続し、加工中、準備中、メンテナンス中、停止中などの稼働データを収集できるようにしました。これにより、現場から離れた事務所のパソコンや、従業員が所持するタブレットなどから、工場全体の工作機械の稼働状況がリアルタイムに一覧表示できるようになります。
さらに、このようなシステムから得られた稼働状況の蓄積データを分析し、加工計画の作成や予実比較ができるようになりました。
前の例では、工作機械を使用している企業が設備の稼働状況を把握するためにIoTを活用していましたが、設備のメンテナンス業者が活用する事例もあります。
メンテナンス業者の場合、従来であれば設備にトラブルが発生すると、設備の使用者から連絡をもらい、それから現場に向かって設備の状況を確認したり、メンテナンスを行ったりしていました。
しかしメンテナンスを担当している設備の稼働状況をIoTで確認できるようにしておけば、トラブル発生時には使用者からの連絡をもらう前に、それを知ることができます。そのためトラブルの発見から連絡によってそれを知るまでにかかっていた時間を短縮でき、素早い復旧作業ができるようになりました。
さらにトラブル発生時には、IoTを活用して設備の診断を行うことも可能です。IoTを活用することで、トラブルの検知と対処が早くできるようになりました。
IoT活用の特徴の一つに、さまざまなデータを取得、保管しやすい点が挙げられます。従来の方法に比べ、稼働中の設備から取得したデータを蓄積、分析しやすくなります。この特徴とAIを活用することで、稼働状況や機械の振動、騒音、温度のようなデータを収集、分析し、これらのデータの変化を検知できるようになります。実際にそれを故障などの予兆検知に活用した事例もあります。
これにより、設備が決定的な故障に至る前にメンテナンスを行えるようになり、設備の停止時間を短くできるようになりました。
設備とネットワークをつないだIoTの活用には、さまざまなメリットがあります。なかでも特に代表的なものをいくつか紹介します。
ネットワークを介してデータが集約できるので、状況を可視化しやすくなります。複数の設備の状況がデータとして集まってくるため、それらをビジュアル的に分かりやすく表示できるソフトやシステムを導入することで、設備の状況が一目で分かるようになります。
業務を最適化するためには、現状を正しく把握しなければいけません。設備の使用状況などを可視化することより、状況の把握がしやすくなるため、より正確で素早い業務の最適化が可能になります。
インターネット活用の大きな特徴の一つが、離れた場所ともリアルタイムでつながれることです。そのため設備をネットワークに接続すれば、離れた場所にある設備もリアルタイムで監視できるようになるというメリットが発生します。
広い工場内の離れた場所にある設備や、他拠点にある設備など、複数の場所に分散している設備の同時監視が可能になります。さらにIoTを活用すれば、人には難しい常時監視もできるようになります。
設備をネットワークにつなぐメリットは、設備の監視だけではありません。AIなどと併せてIoTを活用することで、大きな故障に至る前に設備をメンテナンスできるようになります。
このような手法を予知保全(予兆保全とも言う)や予兆検知といいます。IoTによって設備を監視することで、さらに進んだ手法が選択できるようになるのです。
2011年以降、IoTに対応している設備も続々と発表、販売されています。しかし工場や事業所で使用する設備は、数十年もの間使い続けられるものも少なくありません。古い設備だとネットワークにつなぐのが難しいケースも多くなります。一方でIoTに接続できないからといって、まだ使える状態の設備を入れ替えるのも、金銭的な負担が大きくなります。
そこで注目されているのが「レトロフィットIoT」という技術です。これは、そのままではネットワークにつながらない古い設備に対し、設備そのものを変えるのではなく、周辺設備を上手く工夫することでネットワークに接続し、IoTを実現する方法です。
近年では、レトロフィットIoTのソリューションを提供している企業も増えてきています。ここでは古い設備にIoTを導入するレトロフィットIoTの事例をいくつか紹介します。
工作機械など、工場で使用される設備の多くには、稼働状況を示す信号灯がついています。緑、黄色、赤などの3~4色ほどのランプで構成されており、稼働中であれば青、トラブル発生時には赤のランプが点灯します。
信号灯に光センサをつけ、信号灯の点灯状況から設備の稼働状況を把握するシステムがあります。この方法ならば、設備そのものを直接ネットワークにつなげる必要がなくるため、IoTに対応していない古い設備でもネットワークに接続できるようになります。
設備のコントロールに必要なパラメータを、針が左右に振れるアナログメータや、電光掲示板にデジタル数字を表示する設備もあります。このような設備に対しては、アナログメータや電光掲示板をカメラで画像として読み取り、データに変換するシステムもあります。
ある弁当販売店が弁当の棚を動画共有サイトでリアルタイム中継することで、ユーザーが在庫状況を確認できるようにしたサービスが話題になりました。また公共施設の窓口での待ち状況を知らせるために「○人待ち」と表示された電光掲示板を動画共有サイトで中継した例も報じられています。
同じように、部品や材料の残量、設備の稼働状況などをカメラでライブ中継する方法もあります。状況を把握するためのセンサを入れ、そこから送られてくるデータを使用する方法もありますが、この方法ならば、特別なセンサを用いなくても設備の状況をネットワーク上にアップロードできます。
レトロフィットIoTは、既存の古い設備をネットワークにつなぎ、IoT化するための方法です。古い設備はそのままにIoT化ができる便利な仕組みではありますが、根本的なIoT化とは異なるものでもあります。一時的な方策として取り入れる価値や効果は大きいですが、恒久的な対策とは考えないほうがいいでしょう。
IoTによって設備を可視化する際には、次のような順番で準備を進めていきます。むやみにデータを集めるのではなく、どんなデータが必要かを見極め、それらに絞って収集することがポイントです。
まずは現場が抱えている課題をさまざまな観点から多角的に洗い出します。そうして出てきた課題の中から、解決できた場合の効果が高そうな課題や、品質やオペレーションに大きな影響を与えている課題を選び出します。
課題の解決に向けて実際に動き出す前に、詳しく分析することが重要です。分析したら、問題となっていることがらの原因や解決するための手段、方法について仮説を立てます。
仮説自体や、仮説を基に導き出された解決手段、解決方法の傍証となり得るデータは何かを調べましょう。必要なデータがそろわない場合は、データの取得方法から検討します。
IoTを駆使してセンサやシステムを活用し、課題解決のために必要なデータを取得し、それを分析しましょう。多角的に詳しく分析をするには、それぞれの設備単独のデータだけでなく、例えば、製造ラインにある設備や機械のデータを統合して時間軸で見るといったことが役立ちます。こうしたデータの取得はIoTが最も力を発揮します。
IoTの活用方法のひとつに、工場の工作機械や事業所のエアコンのような設備と、ネットワークをつなぐ方法があります。設備とネットワークをつなげたIoTでは、設備の稼働状況が可視化しやすくなったり、生産計画が立てやすくなったり、メンテナンスにかかる時間が短縮できるなどのメリットがあります。またAIと併せて、さらに高度な活用ができるようになり、予兆検知などにも役立てることができます。
古い設備をIoTにつなぐ方法として、レトロフィットIoTという手段があります。これらは、設備にネットワークと接続できる機能がなくても、設備が表示する内容をカメラやセンサを使って認識し、ネットワーク上にアップロードする手段でもあります。設備の信号灯やアナログメータを活用したり、動画で中継したりできます。
設備をIoTにつなぐためには、まず課題解決に対し、どのように解決していくかの仮説を立てます。その後、仮説に沿って必要なデータが取得できるようセンサなどを配置、取得されたデータを分析し、課題解決に向けた対策を行っていきます。