事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
IoTにはさまざまな活用方法がありますが、製造業においては、設備の稼働状況を見える化するために活用される例が多いと言えます。ここではIoTによる設備稼働状況の見える化に関する基礎知識や事例、メリットなどを紹介します。
設備稼働状況の見える化とは、特に意識をしなくても設備の稼働状況が目に飛び込んでくるような仕組みをIoTなどを使うことで実現することです。
もともと「見える化」とは、トヨタ生産方式(TPS)における「目で見る管理」から生まれた言葉です。意識的に見たり、情報を探したりしなくても、必要な情報が目に飛び込んでくるような状況を作ることを意味します。IoTによる設備の稼働状況の見える化とは、離れた場所からでも設備の稼働状況がひと目で分かるようにするシステムです。
従来、工場にある多くの機械や設備、あるいは離れた事業所の機械や設備の稼働状況は、現場で確認しないと分かりにくいものでした。そこでIoTによって機械や設備をネットワークにつなぐことで、機械や設備の稼働状況の情報が収集できるようになるのです。さらにこれをネットワーク上から確認できるようにすることで、多くの機械や設備の稼働状況がひと目で分かるようになり、稼働状況が可視化されます。これをさらに事務所に設置した大きなモニタなどに表示することで「見える化」が実現します。
稼働監視とは、工場内の機械設備の稼働状況をリアルタイムで把握することを指します。工作機械や加工機などの、加工中・仕掛かり中・停止中といったステータスや、トラブルでの停止、トラブルの状況などの情報をネットワークで収集し、可視化します。
また他にも、廃液タンクの液面の高さや自動供給される材料の残量など、生産に重要なさまざまな情報が可視化できます。特に廃液タンクの液面や材料の残量の情報などは、作業者や管理者の目につきやすい場所に常に表示し、見える化を図ることで、メンテナンスや補給などのタイミングが分かりやすくなります。
設備稼働状況を見える化するためには、まず可視化しなければいけません。そこで工場の生産設備などを中心に、さまざまな場所で活用されている設備稼働状況可視化について、いくつかの代表的な事例を紹介します。
工場で使われている工作機械の稼働状況を可視化するケースは多くあります。しかし工場によっては、使用している機器が古かったり、機器の種類が多岐にわたっていたりするため、PLCへのアクセス方法が分からない、信号が異なっているなど、一律で情報を収集するのが困難なケースも少なくありません。
そこである現場では、機器の上部についている信号灯の点灯を光センサでキャッチするシステムを作りました。赤、黄、緑の信号にそれぞれ光センサを取り付け、どの色が点灯しているかの情報を収集したのです。
これにより工場の機器の状況が、ネットワーク上でひと目で分かるようになりました。稼働中の機器と、トラブルなどで停止している機器がどれだけあるかがリアルタイムで分かるため、加工計画の作成や予実比較がしやすくなりました。
設備の稼働状況の可視化は、工程改善や生産性向上に役立てることができます。
工作機械の稼働状況の記録から、各設備がどれくらいの時間動いているかの情報を取得することにより、各工作機械の負荷が可視化されました。これにより、他の機械に比べて稼働時間が密になっている機器や、トラブルでの停止が多く工程のボトルネックとなっている設備を見つけました。
IoT導入以前は、各機械の状況を時系列と共にさかのぼって確認するのは困難でしたが、IoTによって稼働状況が可視化され、さらにそれがデータとして残るようになったため、このような分析が可能になったのです。
分析の結果、ボトルネックとなっている工程を他の工作機械に振り替えたり、同様の加工ができる機械を追加したりするなどの対策が行われました。結果として、ボトルネックが解消できたことで、月の生産高が増し、売り上げの増加につながりました。
IoTによる設備の見える化により、保全の質を向上させた例もあります。
各工程で使用されているコンベアを動かすモータの例では、IoTの導入前までは定期的に全てのモータのメンテナンスや点検を行っていました。しかし工程によって多く動くコンベアと、少ないコンベアがあるため、モータによっては定期メンテナンスより前に調子が悪くなったり、逆にまだあまり動いていないのにメンテナンスが入ったりするという状況が発生していました。
そこでIoTを活用し、それぞれのコンベアの稼働状況を収集、分析。一定期間中に実際に稼働していた時間を記録したり、故障に至るまでに何時間稼働したかなどの情報を取得したりしました。見える化により、それぞれのコンベアやモータの正確な稼働状況が分かるようになり、予防的な保全や適切なタイミングでのメンテナンスが可能になりました。
設備の稼働状況の見える化には、さまざまなメリットがあります。そのなかでも特に代表的なものを紹介します。
見える化の前段階として、機械や設備の稼働状況の可視化が必要です。可視化することで、稼働時間や稼働率などの状況が数値で明確に把握できるようになります。
一つ一つの機械や設備においては、それぞれの稼働状況が分かっていたとしても、工場全体や工程全体を俯瞰して考えようとすると、従来はカンコツに頼っているケースがほとんどでした。しかし、IoTを活用して稼働状況の情報を集めることにより、稼働時間や稼働率が可視化できるようになります。さらにそれを見える化し、情報を共有することで、改善活動などが効果的に行えるようになります。
従来は、工場内にある複数の設備や複数の拠点の設備など、離れた場所にある設備の情報をリアルタイムで把握するのは難しいことでした。しかしIoTを活用すれば、それらの情報をネットワーク経由で集約できます。
さらに収集した情報をひと目で分かる形に表示できるシステムを作り、会議室の大きなモニタなどを使って見える化することで、現在の状態が正確に全員に伝わるため、効率のいい生産計画などが作りやすくなります。
設備稼働状況の見える化は、予知保全にも活用できます。各機器の正確な稼働時間が数値として見えるようになるため「想定より稼働時間が伸びてしまい故障した」ような事態が防げ、故障やトラブルに至る前にメンテナンスを行えるようになります。また稼働状況と故障の相関データも蓄積できるため、故障の兆候を検知して先行でメンテナンスを行う予知保全などにも活用可能です。
さらに見える化により、離れた場所にある機器の故障やトラブルが誰でもすぐに分かるようになります。トラブルを起こしたまま稼働していたり、停止に気づかず放置されていたりするようなケースがなくなる他、トラブルからメンテナンス依頼までの時間が短くなり、工程の停止時間を短くできます。
近年では製造業においてもIoTが広く浸透し、PLCから稼働情報が取れるようになるなど、IoTに対応している設備も続々と出ています。そのため設備の稼働状況の見える化も、よりやりやすくなってきました。
一方、IoTという考えが出るよりも前に作られた古い設備の場合、ネットワークにつなぐのが難しいケースはまだ少なくありません。しかし現在では、そのような機器を比較的簡単にネットワークに接続するソリューションを提供している会社も増えてきました。
事例でも紹介したように、工作機械の信号灯に光センサを付ける方法があります。光センサの取り付けも含め、稼働状況見える化のシステムを提供している会社も増えています。さらに近年では、信号灯のみを取り替えればIoTで稼働状況の可視化ができる、IoT対応の信号灯も販売されるようになりました。
IoTが出てきた後に登場した技術により、IoTの活用が容易になったケースもあります。その代表的なものが、カメラとAIを併用した画像診断です。
例えば、機器のパラメータが7セグメントディスプレイで表示されているものを、カメラによる画像診断で読み取って数値に変換し、ネットワーク上に表示する方法があります。また工作機械の前にいる人の動きや人の有無、機械のドアの開閉などから、機器の稼働状況を判断し、データとして表示させる方法もあります。
メリットの多い、設備稼働状況の見える化ですが、実際に実施していく際にはさまざまな注意点があります。そのうち代表的なものをいくつか紹介します。
見える化において最も注意しなければならないのは、見える化自体が目的になってしまうことです。設備の稼働状況が見えるようになっても、それを活かさなければ意味がありません。可視化されたデータを活用して、改善に着手していきましょう。
設備の稼働状況の見える化が目的になってしまうと、その先の改善につながらないケースが多くなってしまいます。そのため、何のために見える化を行うのか、事前に目的やゴールを明確にしておくといいでしょう。
もともとある課題を抽出し、見える化を行うことで、どのようなアプローチができそうか、仮説を明確にしてからスタートする必要があります。
見える化を実践する際、必要なデータの取得方法にもさまざまな方法があります。PLCからの信号を取得する以外にも信号灯の点灯を光センサで検知したり、機械の振動や扉の開閉、人の動きから判定したりする方法などもあります。
使われている機械や設備の状況、必要なデータに合わせ、どのようにデータを取得すれば効率的に情報が集められるかを事前に検証しておく必要があります。
「見える化」とは、意識的に見たり、情報を探したりしなくても、必要な情報が自然に目に飛び込んでくるような状況を作ることを意味します。IoTによる設備の稼働状況が、離れた場所からでも設備の稼働状況がひと目で分かるようにすることを、設備稼働状況の見える化と言います。
設備稼働状況の見える化により、加工計画の作成や予実比較に活用できたり、機械の稼働率から工程のボトルネックを発見できたりするなどの事例があります。さらに、予知保全に活かすことも可能です。
新しい設備にはIoTに対応しており、稼働状況などのデータをPLCや専用のポートから取得できるものがあります。しかし古い設備の場合には、外付けのセンサを利用したり、カメラなどから設備の情報を読み取るシステムなどもあるため、活用するといいでしょう。
設備稼働状況の見える化を行う際には、見える化できただけで満足せず、その先の改善につなげることが大切です。そのためにも、事前に課題を抽出し、見える化によりどのように解決していくのか、仮説を立てておくことが大切です。