事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
製造業におけるIoTの活用にはさまざまな方法がありますが、生産ラインのIoT化も製造業でのIoT活用の形のひとつです。ここでは生産ラインのIoT化に対する基本的な情報や、事例、メリットなどを紹介します。
生産ラインのIoT化とは、IoTを用いてラインの生産性の向上や従業員の働き方改革など、さまざまな改善を行うことです。
一口に「生産ラインをIoT化する」といっても、何のためにIoT化するかによって、導入の仕方は大きく変わります。ここでは生産ラインのIoT化を4つの視点に分けて紹介しましょう。
生産ラインで多く行われているのが、設備の可視化です。設備の稼働状況や稼働時間、負荷やトラブルの有無、振動や音、温度の変化などを、IoTを使って監視します。またネットワークを通じて、それらを可視化できるシステムを併用することで、工程の改善やトラブルの防止、トラブル発生時の復旧の迅速化などのメリットが見込めます。
工場設備のように固定されていない、比較的小型のモノの状態を監視する方法です。例えばネジやワッシャーをはじめとする部品の出捌けや、塗料やワイヤーなどの材料の残量を確認したり、カゴ台車の位置などの監視をしたりします。
さまざまな情報を集約して確認できるようになり、在庫発注を適切に行えたり、正確な履歴が残るため監査や棚卸しの際に情報を整理しやすくなったり、トレーサビリティの確保ができるなどのメリットがあります。
生産ラインにおけるIoTの利用は、ヒトの監視にも活用できます。ラインで働く作業員の位置や行動を監視し、正しくない作業を行った場合にはアラートを発するようにしたり、立ち入り禁止区域への立ち入りの監視、熱中症予防のための体温や心拍の監視などが行えたりします。また、ヒトの移動の可視化はライン配置の最適化などにも活用できます。
図面情報や製品情報などの情報を、生産ライン上のどこからでも確認できるようにするためにもIoTが活用できます。ライン上のどの場所にいても、端末から作業標準書や手順書が見られるようにしたり、スマートグラスを活用して作業者の手元に情報を表示したりする方法があります。
続いて、前章で紹介した注目するものごとに分けてIoTを活用した事例を紹介していきます。
生産ライン上にある工作機械の稼働状況をIoTによって収集し、ライン上の全ての機械の稼働状況がネットワーク上からひと目で確認できるようにしました。これにより工作機械の稼働状況の見える化が実現できました。
また、どの機械に停止が多いのかや、どの機械の稼働時間が長いかが明確な数値によって可視化され、ライン上のボトルネックが分かり、工程改善につながりました。
IoTでモノを監視する例としては、ネジのような小物部品の保管棚をネットワークにつなぎ、自動ロックとバーコードリーダーを設置したケースがあります。
部品を入れる際には、通い箱に貼り付けられているバーコードを読み取らせます。すると、その部品を入れる対象の引き出しだけ、ロックが解除される仕組みです。部品を引き出しに入れたら、入れた数を記録します。同様に、必要な部品を取り出す際もバーコードリーダーで読み取ることで、対象の部品が入っている引き出しだけが開けられるようになります。
このような仕組みにより、部品の混入や使用ミスの撲滅ができました。さらに、従来は大まかにしか管理できていなかった在庫数も正確に把握できるようになり、その上それらをネットワーク上から確認できるため、発注業務が的確に行えるようになりました。
生産ライン上で作業員の手元を撮影し、画像診断により作業内容を判定した例があります。例えばネジを絞める手順が間違っていたり、手順に抜けがあったりするなど、異常な作業を行うとアラートを発する仕組みを作りました。
これにより組み立てライン内での作業ミスがなくなり、さらに作業内容が正しく行われていたことが記録できるようになって、トレーサビリティの確保にもつながりました。
作業員が着用するARグラスで、作業内容や作業手順を表示できるようにした例があります。加工機オペレーターが作業を行う際、手元で作業手順書が確認できるため、作業が効率的に行えるようになり、作業のミスも減りました。
IoTの活用にはさまざまなメリットがあります。ここでは生産ラインでIoTを活用するメリットをいくつか紹介します。
IoTの大きなメリットの一つは、情報を集約できることです。生産ライン全体や工場全体など、広い範囲を一括監視できることにより、そこにある設備やモノ、ヒトの状況や動きが可視化されます。
全体を俯瞰できるようになるため、ボトルネックが分かりやすくなったり、効率的ではない動きが見つかり、改善活動しやすくなったりします。
IoTを活用することで作業の様子を確認したり、間違った作業が行えないような仕組みを作ったりできます。これによりミスが撲滅でき、品質向上につながります。
また生産ラインを監視することにより、トラブルからの早期復旧につながるなど、業務を最適化し生産性の向上も見込めます。
IoTの活用は、情報の集約や確認がしやすくなるのが大きな特長です。そのため保守やトラブルの記録、製品情報やモノの動きなど、生産ライン上のさまざまな情報も集約、保管しやすくなります。監査やトラブルの発生時、改善を行いたい際など、過去の情報が確認しやすくなるのもIoT導入の大きな特長です。
生産ラインにIoTを導入する際は、次のようなポイントをチェックしながら、順番に進めていきましょう。
IoT化はとても便利ですが、注目するポイントや手段が多岐にわたるため、いきなり全てをIoT化するのは非常に大変な作業になってしまいます。そのため、最初はターゲットを絞って導入し、様子を見ながら徐々に範囲を広げていくのがいいでしょう。
ターゲットの絞り方には、前述のように“何に”注目するかで分ける方法もありますし、生産ラインの一部分に注目する方法もあります。
IoT化において重要なのは、ただIoTを導入して終わるのではなく、「今ある課題を解決し、改善を行うこと」です。そのため、まずはIoT化による課題解決までの仮説を立てておく必要があります。
IoT化で収集できるデータにはさまざまな種類があり、同じようなデータを収集する場合にも、どのようなセンサをどこに設置するかなど、たくさんの方法があります。そのため、どのようなデータが必要で、それを取得するためにはどんな手段を用いれば効率的なのか、事前に検討しておかなければいけません。
生産ラインにIoTを導入できたら、収集されるデータを蓄積し、分析と改善を行います。分析においては、ソフトウェアやシステム、AIを活用する方法もあります。
生産ラインIoT化には大きく分けて4つの視点があります。設備をIoTで監視する方法、モノをIoTで監視する方法、ヒトをIoTで監視する方法、情報を参照できるようにする方法です。
生産ラインにおけるIoTの活用には、設備やモノ、ヒトの可視化、品質や生産性の向上、情報の集約や確認がしやすくなるなどのメリットがあります。
生産ラインにIoTを導入する際には、事前に解決したい課題とゴールを設定し、IoT化による課題解決までの仮説を立てておく必要があります。また必要なデータの種類と収集方法の検討も必要です。さらにIoTの導入後には、データの蓄積と分析を行い、それを基に課題の改善を行っていきます。