事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
DXやデジタル化、IoTというと、どちらかというとパソコン回りのイメージを持つこともあるかもしれません。しかしDXはすでにパソコンなどを離れ、それと意識しない形で私たちの生活に入り込んでいます。それは製造業の現場においても同様です。ここでは製造業の現場におけるDXについて、事例やメリットなどを紹介していきます。
製造業のDXについては、これまでも紹介してきました。今回は特に、現場におけるDXに注目してDXの取り組み事例や課題などについて述べていきます。
DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)のことです。“trans-”は「超える」「交差する」という意味の接頭語で、“Transformation”で「(性質、本質などが)変わること」となります。TransはXで省略されることがあり、DXと表されています。つまりDXとはデジタル技術を活用してビジネスをトランスフォーム(変容)させるという意味で、ただ単にITやICTなどを導入して業務をデジタル化する(デジタルに置き換える)だけのものとは意味が異なっています。業務をプロセスから見直し、データやデジタル技術を用いて、顧客目線で新たな価値を創出していくことだと定義されています。
製造工程は大きく「エンジニアリングチェーン」と「サプライチェーン」の2つに分類されます。エンジニアリングチェーンとは、企画支援や設計支援などの領域です。一方でサプライチェーンとは、共同受注や技能継承、物流最適化、予知保全、遠隔保守などが該当します。
現場でのDXは製造工程におけるサプライチェーン側で行われるものです。そのため、工場や倉庫の中での業務が対象になります。
製造業に限らず、さまざまなものがIoT化していく中、製造業においてもデジタルによる変革は避けて通れません。しかし製造業の現場においては、現場ならではの課題やDXの必要性が存在しています。
日本の製造業においては、設備投資に対し消極的な姿勢が多いことが一つの特徴です。またその傾向は、特に中小企業になるほど強くなるという調査結果もあります。
DXをはじめとした設備投資が進みにくい理由として、従来のやり方や従来の手順を変える際には、現場から抵抗を受けやすいことが挙げられます。この原因の一つとして、日本特有の「精緻な作業」を良しとする風潮から、デジタルで作業を簡易化する、工程を削減するというような考えが浸透しにくいことが考えられます。
少子高齢化に伴い、日本全体で労働人口が減少する時代に突入しました。製造業に限らず、あらゆる業界で人手不足となり、人材の取り合いが発生しているのです。現状では少子化が加速する一方なため、この傾向が解消される見込みは薄いと言えます。
そのため、製造業の現場においても、今までより幅広い属性の従業員を管理する必要性が発生します。従来のように長い時間をかけて高度な人材を育成する余裕が失われていきます。つまり作業の標準化や、カンコツ、努力に頼らない仕組みが必要になってくるのです。
ここでは、既に製造業の現場で行われているDXの事例を紹介します。実際の事例に触れることで、DXによって現場にどのような変化が起こせるのか、イメージがつかみやすくなるでしょう。
マニュアル制作支援ツールを使用した事例です。静止画や動画を撮影して、かんたんな説明文を入力するだけでマニュアルが作成できるようにしたツールを使って、従来の作業指示書よりも分かりやすいマニュアルを作成したものです。オンラインでマニュアルを管理することにより、作業場からタブレットでマニュアルを見られるようにしました。
文字や写真だけでなく、動画も添えられるため、これまでよりも作業の様子が分かりやすくなり、新しい作業員でもスムーズに業務が行えるようになりました。またマニュアルがオンラインで一括管理されているため、作業変更が生じた場合にも更新がしやすくなりました。元ファイルを更新すれば、全ての端末から最新の情報が確認できるようになったため、作業場からでもすぐに最新のマニュアルを参照できるようになりました。
部品在庫の管理のため、倉庫の棚にバーコードリーダーを取り付けた事例です。このバーコードリーダーはネットワークにつながっており、入庫と出庫の際に、部品に取り付けられたバーコードを読み取ることで、在庫の状況が自動的にクラウド上に記録されるようになっています。
これにより、在庫の数や入庫、出庫の様子が、現場から離れた事業所からでもすぐに分かるようになりました。受注したものの、部品の在庫がなかったなどのトラブルが解消されました。
組み立て工程において、部品が全て組み付けられているかの確認にDXを適用した事例です。従来は部品の組み付け後に作業員が指差呼称を行い、部品の取り付けチェックを行っていました。しかしミスを完全にはなくせないことから、自動化することにしました。
作業台の上にカメラを置き、画像判定による自動チェックを行うことにしたのです。これによりミスがなくなり、品質の向上が実現しました。さらに、作業が早い人の作業をカメラで記録して共有することで、コツや手順を標準化でき、他の作業員の作業速度向上にもつながりました。
工場内にある設備は、定期的な保守や点検を必要とするものも少なくありません。しかし、保守のために設備が設置されている複数の事業所を巡回するのは、作業員の負担になります。
そこで設備に対し、ネットワークを介して特定の点検プログラムを実行させるようにしました。また、そのときの挙動と結果をセンサーを介してネットワーク上から確認できるようにしました。
これにより遠隔保守が可能になりました。現場に行かなくても一部の保守やメンテナンスができるようになり、保守作業員の出張頻度が下がりました。
製造業の現場におけるDXには、さまざまなメリットがあります。ここでは代表的なメリットを紹介します。
DXによって、製造現場における状況の可視化や作業の自動化、効率化が可能になります。そのため生産性が向上し、生産に伴うコストを削減できるようになります。
事例でも述べたように、デジタル化によって作業ミスをなくすことも可能です。製造現場にはミスをなくすためのさまざまな仕組みがありますが、やはり作業をしたり判断を下したりするのが人である以上は、ミスを完全になくすことはできません。しかしデジタルを用いた仕組みを活用すれば、ミスを撲滅することも不可能ではありません。
さらにDXにより、記録や情報を残すことで、伝達ミスなどによる不良もなくせます。
製造現場でDXが必要な理由の章でも述べましたが、労働人口が減少していく時代において、省人化は非常に大きな課題の一つです。
そのため、作業の効率化だけでなく、遠隔監視や遠隔保守、予知保全などにより、作業そのものの量を減らし、それを行う人を減らしていく仕組みが必要になります。
DXにより省人化していくことは、業務上のメリットになるだけでなく、今後も事業を継続していくためには欠かせない視点です。
DXにおいてはさまざまな課題がありますが、ここではとくに製造業の現場で起こりやすい課題を紹介します。
多くの場合、DXを推進するのは組織の上層部である一方、実際に機器や仕組みを使うのは現場にいる人になります。そのため、DXに対応した新たなルールの設定を行ったり、機器の使い方を説明するなど、現場の教育が必要になります。
前述のように、製造業の現場では精緻な作業に価値が置かれがちです。仕組みの導入における障壁になるケースもあるため、DXを行う際には組織の経営だけでなく、現場にとってもメリットがあることを伝え、納得してもらう必要があります。つまりDX導入の目的や意義も含め、現場の隅々まで意識を変える必要があるのです。
現場で使われる機器の選定が難しいのも特徴です。デジタル化はすでにさまざまな場面で行われているため、似たような機能の機器が複数あるケースも少なくありません。そのため、どれがその現場に向いているのか分かりにくい場合もあります。
本当の意味で現場にとって使いやすい機器を選ばなければ、DXによって行われた作業変更が、現場の負担になってしまう可能性もあります。同じ目的でも、解決方法が異なれば選ぶべき機器も異なる場合もあるため、課題と理想の姿をよく考え、適切な機器を選定しなければいけません。
DXやIoT化でしばしば起こる問題ですが、DXを実施すること自体が目的になってしまう場合があります。最新技術やシステムに魅力を感じ、それを導入したものの、本来の目的や効果に対する考察が十分だったときなどです。このような場合、現場では作業の手間だけが増えて、そのメリットが還元されない、本末転倒の事態が発生してしまいます。
DXによって創造したい価値や解決したい課題を事前にしっかりと確認し、目的を見失わないようにしましょう。また導入語も、継続的に目的と効果の確認や見直しを行い、手段と目的のズレを早期発見し、対策を立てる体制も整えておくといいでしょう。
製造業の現場におけるDXとは、製造業のサプライチェーン側で行われるものです。人手不足などの問題により現場でもDXが求められていますが、導入までの障壁も多く、進んでいない企業も少なくありません。製造業の現場でのDXは、在庫の管理や作業ミスの防止、省人化などの目的で導入されているケースもあります。製造業の現場でDXを行う上では、経営層の考えをしっかりと伝えて現場の意識を変え、賛同を得るための現場の教育とコミュニケーションが特に重要になります。