事業内容
- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
IoTの特長の一つとして「情報が集約しやすくなる」ということがあります。この特長が強く活かされる業種の一つが物流業界です。この記事では、物流におけるIoTの導入について紹介していきます。
IoTはさまざまな業界で導入が進められています。今回は製造業と関係の深い、物流業界におけるIoT活用に注目し、実際の事例などを紹介します。
IoTとはInternet of Thingsの頭文字をとったもので、日本語では「モノのインターネット」と言われます。このことから、IoTとはモノとインターネットがつながることを意味しています。物流においては、位置センサや温度センサなどを介して、トラックや保管棚などをインターネットにつなげるケースが多く見られます。
日本は労働人口減少の時代に突入しています。そのため、どの業界でも人材不足に直面しています。これは当然、物流業界も例外ではありません。
また物流業界においては「2024問題」と呼ばれる、トラックドライバーの長時間労働を規制する動きや、配送途中の事故や渋滞などが問題として取り上げられています。物流業界においては、こういった問題をIoTを使って解決することが望まれています。
物流におけるIoTの活用方法には、さまざまな形があります。ここでは、いくつかの代表的な例を紹介し、物流におけるIoT活用のイメージを伝えていきます。
物流では、「どこに何が何個あるか」を正確に把握することが重要です。ものを保管している場所や、在庫の数に相違があると、注文を正しく受けられなかったり、余計な品物を発注してしまったりすることにつながるからです。
そこで、在庫がある場所や個数をクラウド上に記録するようにしました。オンラインでどこからでも確認できます。また同時にIoTを用いて、在庫の出入りをセンサで監視し、常に最新の情報がクラウド上に登録されるようにしました。
これにより、記録上の在庫数と実際の在庫数の間の相違がなくなりました。また、棚卸の際の在庫チェックが行いやすくなり、生産性が向上しました。
高度化する物流業界において、倉庫内のピッキングの速度は大きな課題の一つです。素早いピッキングを行うためには、在庫の場所を把握することや、効率的な集荷の経路を選択することが必要です。
そこで、IoTを活用し、作業員がピッキングのために倉庫内を移動する最適な経路を手元の端末に表示するようにしました。表示に従って移動することにより、新人でもベテランと変わらないスピードでピッキングができるようになりました。
冷凍食品などの配送において、輸送中の温度変化は品質の劣化などにつながる大きな問題です。そこでトラックのコンテナ内に温度センサを配置し、インターネットを介して温度を遠隔監視、記録することにしました。
これにより、輸送中に大きな温度変化がなかったことを証明できるようになり、品質保証に役立ちました。また、どのタイミングでトラックのコンテナ内の温度が変化したかをモニタリングすることで、温度が変化する原因を究明するきっかけにもなりました。
物流は「配送、輸送」「保管」「荷役」「梱包、包装」「流通加工」「情報システム」という6つの機能を持ちます。これらの機能に対し、IoTがどのように貢献できるか、一つずつ紹介します。
配送や輸送に対しては、荷物のトラッキングシステムやトラックの最適な経路指示などが挙げられます。荷物が届くタイミングの把握や、配送中のトラブルに対するリカバリー、複数の配送先を回る際のルートの表示によって配送効率を向上させるなどのメリットがあります。その他、輸送中の温度管理などにも役立てられます。
物流の機能の一つが荷物の保管です。発送までの間の一時的な保管だけでなく、長期的な保管を行うこともあります。このような場合、荷物の数と場所を正しく管理しなければいけません。
IoTでは、棚と荷物にバーコードを添付し、このバーコードを読み取ることで、棚の位置と荷物の位置を紐づけ、オンラインでそれらを確認できるようにできます。また、入庫、出庫の記録や、倉庫内の温度管理の記録を自動化できます。
荷役におけるIoT化では、トラックに荷を積み込む順番の最適化やトラックの到着時刻予想などが挙げられます。荷役においては、荷物の管理というより業務の効率化を目的としてIoTが活用されるケースが多くあります。
梱包、包装においては、作業指示書のオンライン化や梱包材の自動選択などにIoTが活用されます。作業指示書をオンライン化することにより、元データを変更すれば、同じ作業を行う場所の指示書のデータが同時に更新できます。さらに指示書の中に動画や画像を挿入できるため、より分かりやすい指示書が作れます。また、梱包材の在庫管理にもIoTが活用可能です。
流通加工においては、在庫の数と場所の管理や、倉庫内の温度管理などにIoTが活用されます。加工に必要な材料の在庫や、保管場所などをオンラインで管理することで、業務効率の向上などのメリットが見込めます。
物流の機能は、かつては5つとされていましたが、近年新たに情報システムが追加されました。これは物流の過程におけるさまざまな情報を、把握したり管理したりするシステムの意味です。この場合のシステムの導入は、IoTを導入することそのものでもあります。
続いては物流の持つ5つの領域「調達物流」「生産物流」「販売物流」「回収物流」「消費者物流」において、IoTがどのように貢献できるかを一つずつ見ていきましょう。
調達物流においては、特にジャストインタイム供給においてIoTが活用されます。仕入れ先と在庫情報を共有することで、発注をかけなくても、在庫が少なくなってきたら仕入れ先から自動的に在庫が配送されてくる仕組みなどが構築できます。
生産物流においては、工場内在庫の管理や物流改善などにIoTが活用されます。複数の事業所や倉庫の在庫の場所や数をネットワーク上で一括確認できるようにすることで、棚卸業務の省力化にもつながります。
また自動搬送装置や自動かんばん方式など、仕組みの自動化においてもIoTが大きく貢献します。
販売物流は近年、EC(インターネット通販)の広がりにより、物流のボリュームが非常に多くなっています。ドライバー不足に悩まされるケースも多く、輸送の効率化などに向けIoTが活用されています。
回収物流とは、リサイクル品を回収する物流のことです。これには、どこにどれだけ回収物が溜まっているかの把握が重要になります。固定した回収ルートを定期的に巡回する方法もありますが、回収物がそれほど集まっていない場所に訪れたり、逆に回収物が集まりすぎている場所で回収しきれなかったりする場合もあります。
そのため、ネットワークを介してオンラインで回収物の集まり具合を確認できるようにし、効率的な回収ができるような方法があります。
消費者物流において重要なのは、消費者と提供者の間で、在庫情報をリアルタイムに共有することです。
消費者物流では消費者が特定のシステムにアクセスするのは難しいため、Webサイトなどが活用されています。ここでもIoTが貢献しています。
物流でIoTを活用するにあたっては、次のような課題が挙げられます。
IoTの導入には、さまざまな機器を導入したり、システムを導入するなど、多くの手間がかかります。そのため、機器の導入が目的化してしまう場合があります。
IoTの導入後には、物流現場の状況が改善されたかどうか検証を行いましょう。
物流に限ったことではありませんが、IoTを導入する場合にはまずは状況を把握し、現場の課題や問題を抽出する必要があります。
物流業界の場合、課題が目に見えにくいケースも多く、準備に手間がかかりがちです。
大規模なシステムの導入には、より多くのコストがかかります。また、同じ事象を知りたい場合でも、センサや機器の使い方でコストが変わる場合もあります。課題や現状に合わせた最適な方法を選ぶ必要があります。
物流業界では、労働人口の減少による人手不足や2024問題などもあり、IoTによる業務の効率化が望まれています。すでに在庫の監視やピッキングの経路案内、トラックの荷室の温度管理などの事例があります。物流における機能や領域、それぞれにおいてIoTの活用によって業務効率の改善・向上が期待できます。